会計基準設定主体国際フォーラム(International Forum of Accounting Standard Setters;IFASS)は、各国会計基準設定主体及びその他の会計基準に関連する諸問題に対する関心の高い組織による非公式ネットワークであり、元カナダ会計基準設定主体の議長であり元国際会計基準審議会(IASB)メンバーであるTricia O’Malley氏が議長を務めている。毎年、春秋の2回、会合が開催れ、今回の参加者は、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、オーストリア、ノルウェー、スペイン、スイス、オーストラリア、ニュージーランド、中国、台湾、日本、韓国、香港、シンガポール、インド、パキスタン、サウジアラビア、米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、シエラレオーネ、南アフリカの各基準設定主体等からの代表者に加えて欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)からの代表者及びその他の地域グループの代表者、国際公会計基準審議会(IPSASB)からの代表者など総勢56名であった。IASBからはHans Hoogervorst議長、Ian Mackintosh副議長、Stephen Cooper理事、Alan Teixeiraシニア・ディレクター他が参加した。
企業会計基準委員会(ASBJ)からは、加藤前副委員長とほか1名が出席した。
No | 議題 | 担当 |
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2013年4月17日 | ||
1 | 開示に関する討議資料 | |
(1)EFRAGの「開示フレームワーク」討議資料 | EFRAG、フランス(ANC)、英国(FRC) | |
(2)FASBの「開示フレームワーク」意見募集 | 米国財務会計基準審議会(FASB) | |
(3)RCの「より広範な開示の検討」 | 英国(FRC) | |
(4)IASBの開示に関する調査及び開示フォーラム | IASB | |
2 | IASBと各国基準設定主体/地域グループとの関係 | IFRS財団、IASB |
3 | 国際公会計基準審議会からのアップデート | IPSASB |
4 | 時事的な問題 | |
(1)投資税額控除等の会計処理 | 南アフリカ(*1)(SAICA、FRSC) | |
(2)IAS第19号における割引率 | ドイツ(DRSC) | |
(3)支配企業及び被支配企業でフレームワークが異なること により生じる会計上の課題 |
インド | |
(4)排出権に関する討議資料 | EFRAG | |
5 | 今後の計画、新議長の選出等 | IFASS議長 |
2013年4月18日 | ||
6 | IASBワークプラン及びIFRS財団の最近の状況について | IASB |
7 | IFASS参加者のプロジェクトに関するアップデート | |
(1)のれんの償却及び減損に関する調査のフィードバック・ レポート |
イタリア(OIC)、ASBJ | |
(2)測定フレームワーク | カナダ(AcSB) | |
8 | 地域グループからの報告
|
各地域グループ |
9 | IFRS for SMEs | シエラレオーネ |
10 | 時事的な問題 | |
(1)概念フレームワークに関する活動 | EFRAG | |
(2)ビジネス・モデルの役割に関する討議資料 | EFRAG | |
⑶その他の包括利益の使用状況に関するリサーチ | ASBJ |
EFRAGは、フランスのANC及び英国のFRCとともに、2012年7月に討議資料「財務諸表注記の開示フレームワークに向けて(Towards a Disclosure Framework for the Notes)」を公表した。また、FASBは、前述のEFRAG、ANC及びFRCのスタッフとともに開示に関するフレームワークの検討を重ねてきたが、2012年7月に単独で意見募集「開示フレームワーク(Disclosure Framework)」を公表した。
本IFASS会議では、EFRAG及びFASBがそれぞれ受領したコメント及び今後の方針を説明した。
両者に寄せられたコメントのうち、関係者の行動の変化の必要性、規制当局と連携した基準開発、柔軟化、年次報告書のフォーマットや構成などが課題である旨については、回答者の見解はほぼ一致していたが、財務諸表の範囲に関するコメントや将来情報の取扱いについては、回答者によって見解の相違がみられた。さらにFASBからは、目的適合性(重要性の定義に関する最高裁判決の議論を含む。)、期中財務諸表及び重要な会計方針の取扱いに関する議論が紹介された。EFRAGからは、重要性及びリスク情報に関する議論が紹介された。
今後の方針について、FASBからは、コメント・レターにおける回答者の懸念への対応、追加的なアウトリーチの実施及び潜在的な対応策について説明があった。また、EFRAGからは、フィードバック・レポートの公表(*2)に関する旨の説明があった。
上記の説明に対して、加藤前副委員長は、財務諸表注記に将来情報が含まれることに関する懸念を示し、さらに経営者の計画や戦略は財務諸表注記に含めるべきでないとコメントした。また、フランスの代表者は、IASBの概念フレームワーク・プロジェクトが既存の開示要求にどのように影響するかが問題であるとコメントした。
次に英国のFRCからの説明に移った。FRCは、討議資料「より広範な開示の検討─開示フレームワークへの道筋(Thinking about Disclosures in a Broader Context ─ A roadmap for a disclosure framework)」を2012年10月15日に公表した。前述のEFRAG及びFASBの開示フレームワークの提案事項は、財務諸表の注記における開示に限定した検討であったのに対し、FRCの討議資料は、年次報告書に含まれる情報全体の開示について検討している点において異なる。
討議資料に対して28通のコメントが寄せられたが、FRCからは討議資料に対して全般的に支持する見解が示された旨が説明された。寄せられたコメントに共通するメッセージとしては、現在の開示要求が詳細すぎる、開示の複雑性とボリュームが重要な事を分かりにくくしている、作成者が‘ストーリーを語る’柔軟性があるように開示要求を設定する原則を作る必要があることなどが挙げられた。
その後、IASBから開示に関する調査の結果と2013年1月28日に開催された開示フォーラムにおける議論について説明があった。この説明に対し、メキシコの代表者から、既存の開示要求は原則主義でなく細則主義になっていることへの懸念が示された。インドの代表者からは、長期的にはXBRLを活用した報告によって解決される部分も出てくるが、XBRLには固有の限界があるとの指摘があった。また、FASBの代表者からは、米国では重要性と基準の記載方法の2つが主要な問題として識別されているとの発言があった。英国の代表者からは、基準設定主体は情報が適切に伝達されるように努力することが必要であり、英国は利用者のニーズを確かめるプロジェクトを開始したとの発言があった。
IASBからASAFを設立した背景、役割、メンバー構成等について説明があった。Hans Hoogervorst議長は、ASAFの設立と第1回のASAFについて、次のとおり述べた。
この説明に対し、多くの代表者からASAFの設立に対する祝辞が述べられた。
質疑応答において、加藤前副委員長がASAFにおける議論の要約にはIASBからのフィードバックを含むべきであると指摘したのに対し、IASBからは、ASAFにおける議論は要約された上で公開され、また、議論の録画を見ることが可能であるとの説明があった。
フランスの代表者は、ベスト・プラクティス・ステートメントの取扱いなどについて懸念が示された。
IFASS議長から、今後IFASSはどのような活動を行っていくかについて説明された。特にASAFとの関係をどのように考えるかが大きな論点となった。IFASS議長からは、IFASSではIASBの作業計画のレビュー、各基準設定主体が行った調査プロジェクトに関する議論、IFRS適用上の課題、各地域グループの活動状況などを議論するため、IFASSとASAFは重複するものでないとの説明がされた。また、今後は小グループに分けて議論を行うのが有益ではないかとの見解が示された。
多くの代表者から、IFASSの継続に賛同する意見が表明され、特に調査プロジェクトやIFRS適用の課題を議論する場として有益であるという意見が述べられた。加藤前副委員長は、IFASSを継続した方がいいと思うが、電話会議を組み合わせた上で実際に集まるのは年1回とする可能性について言及した。また、一部の参加者から多くの国際会議が開催されることから、効率化すべきという指摘があった。
IFASS議長は各国代表者の意見を踏まえて、今後も年2回IFASS会議を開催することで合意したと総括した。また、小グループに分けて議論を行うこと、今後の議題を策定するステアリング・コミッティを作ること、効率性を改善するために旅費と開催時期に関する問題に取り組むことなどが決まった。
その後、IFASSのメンバーシップ要件やASBとの関係の文書化などについて議論された。議論の結果、既存の文書(ベスト・プラクティス・ステートメントを含む。)にIFASSの活動内容、議長の選出条件などを組み込んだ文書を作成することとなった。その際、IASBと地域グループとの関係をベスト・プラクティス・ステートメントに追記することになる。この文書は2013年9月に開催されるIFASSにおいて提示される予定である。
IPSASBからIPSASBの目的、戦略的目標、概念フレームワーク・プロジェクトの状況などについて説明がなされた。
IPSASBは、以下を行うことによって公的セクターの財務報告の品質及び透明性を向上させることを目標としている。
IPSASBの戦略的目標として、①公的セクター向けの概念フレームワークを開発すること、②公的セクターにとって重要なプロジェクトを進めること(公的セクターに特有の問題、IFRSとのコンバージェンス、基準のメンテナンスなど)、③国際公会計基準に関するコミュニケーションを行い、適用を促進することが挙げられた。
IPSASBの概念フレームワーク・プロジェクトは、下記のとおり4つのフェーズに分けて進められている。
フェーズ | 項目 | 公表(予定)次期 |
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フェーズ1 | 目的及び質的特性 | 2013年最終化 |
フェーズ2 | 構成要素と認識 | 2012年11月公開草案 |
フェーズ3 | 測定 | 2012年11月公開草案 |
フェーズ4 | 表示 | 2013年4月公開草案 |
IPSASBの概念フレームワーク・プロジェクトの特徴として、構成要素として繰延インフロー(アウトフロー)が含まれていることが挙げられる。繰延インフロー(アウトフロー)とは、非交換取引により生じた純資産の増加(減少)であって、将来の特定期間に(他の)主体が使用するために提供されるサービス提供能力又は経済的便益の流入(流出)をいう。
スピーチの最後に主なメッセージとして、①政府の説明責任に関して意思決定に有用な情報を推奨するのに大きな障害が存在していること、②文化的なばらつきを反映する場合にグローバルな公会計基準設定主体はより効果的な活動ができるかの2点が挙げられた。
この説明に対し、オーストラリアの代表者からは、概念フレームワークの構成要素の定義について意見があり、特に繰延インフロー(アウトフロー)に関する懸念が示された。また、IASBとIPSASBでいくつかの領域(例:リース)において基準が異なっていることに対する懸念が示された。
2012年10月にチューリッヒで開催されたIFASS会議において、ある種の投資税額控除等について、IAS第12号「法人所得税」に基づき会計処理をするのか、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」に従って会計処理をするのか、という疑問が南アフリカの基準設定主体から提起された。投資税額控除(Investment Tax Credits;ITCs)は、IFRSでは定義されていないが、IAS第12号及びIAS第20号の適用範囲外となっており、実務上の問題点が生じているという。
前回のIFASS会議の後、南アフリカの基準設定主体はIFASSメンバーに対してアウトリーチを行い、本IFASS会議においてそのフィードバックを報告した。その概要は、以下のとおりである。
国・地域 | 回答 |
---|---|
英国 | 研究開発に関する投資税額控除が存在する。現時点ではIAS第12号が類推適用されているが、IAS第20号を類推適用すべきではないかという議論がある。投資税額控除についてはIFRSでカバーされていないため、投資税額控除を定義するメリットがあると考えられる。 |
オランダ | 投資税額控除は主として小規模企業に対するものであり、金額的には重要でない。唯一、大きなものは、環境投資に関する投資税額控除である。歴史的には有形固定資産の減額処理を行っていたが、いくつかの会社は有形固定資産の減額処理はせずに繰延税金処理をしている。 |
ドイツ | 投資税額控除に該当するものは存在していないと考えられる。 |
オーストラリア | 研究開発に関する投資税額控除が存在しているが、会計処理はIAS第12号を類推適用しているケースと IAS第20号を類推適用しているケースに分かれている。 |
ニュージーランド | 投資税額控除は存在していない。 |
マレーシア | 投資税額控除が存在しているが、実務上、会計処理はばらついている。 |
カナダ | AcSB内のIFRS Discussion Groupは、2010年11月に投資税額処理に関する議論を行った。そこでは、 IAS第12号又はIAS第20号のいずれを適用するかは、事実関係と状況によるのではないかとされた。そのため、本件に関してはIFRS解釈指針委員会に対する議題の提出を行わなかった。 |
この報告に対して、インドの代表者は、インドではIAS第20号を類推適用した投資税額控除に関するガイダンスを出していると述べた。FASBからは、米国には投資税額控除に関する基準が存在せず、投資税額控除は事実関係と状況に応じて会計処理されており、現在、調査を進めているとの説明があった。また、オランダの代表者は、投資税額控除は緊急の検討を要する課題ではないと発言した。
南アフリカの代表者は、IASBに検討を促す程の緊急性はないと総括した。
2012年10月にチューリッヒで開催されたIFASS会議において、ドイツの会計基準設定主体(DRSC)からIAS第19号「従業員給付」における退職後給付債務に対して適用される割引率について問題提起があった。特に以下の点が問題とされた。
その後、本件はIASB及びIFRS解釈指針委員会において複数回議論された。2012年11月に開催されたIFRS解釈指針委員会においては、HQCBの市場利回りを決定するにあたっては経営者の判断を必要としていること、割引率の決定方針は毎期一貫していなければならないため期によって方針が大きく変わることは想定されていないことなどから、本件について幅広い論点だと認識されたが、2012年度末に向けたガイダンスはほとんど提供されなかった。
2013年1月に開催されたIFRS解釈指針委員会では、割引率の決定の際には、給付が支払われる通貨で発行されたすべての債券を含めなければならず、これには、例えば他の国で営業している企業が発行した債券も含まれるという2005年からのIFRS解釈委員会の見解に支持が示された。その上で、より概念的なことに焦点を当てて、IAS第19号の第84項に規定されている基本原則(貨幣の時間価値を反映するが数理計算上、投資上のリスクは反映しないこと)の再確認、割引率はリスクフリーレートであるべきかに関する議論、国債を使用するときは「優良」でなければならないことの確認をIASBに行うこととした。
2013年2月のIASBボード会議は、以下を確認した上で、IFRS解釈指針委員会は必要とされる明確化を行わなければならないとした。
これを受けて、2013年3月に開催されたIFRS解釈指針委員会は、スタッフに、適切な専門家(例えば、アクチュアリー)と協議するとともに、上記のIASBの方向性を反映するIAS第19号の狭い範囲の修正に関する提案を作成するよう要請した。また、スタッフに、提案の文案作成の際に対処すべきコメントをいくつか提供した。さらに、修正案では、割引率の決定の際に企業は他の国において発行されている優良社債を含めるべきである(給付が支払われる通貨で発行されている場合)という点を明確化するように依頼した。IFRS解釈指針委員会は、スタッフの提案を今後の会議で議論する予定である。
ドイツの代表者からは上記の経過について説明がされた上で、今後の推移を見守りたいと述べた。議論において、特段の決定事項はなく、本件は次回のIFASS会議で再度取り上げられることとなった。
インドの代表者から支配企業及び被支配企業でフレームワークが異なることにより生じる会計上の問題について説明された。具体的には、以下の状況に関して問題提起がされた。
この説明に対して、複数名の代表者から自国においても同様の状況が発生しているとの発言がされた。
2012年5月にフランスのANCは、排出権に関する国際的な議論を喚起するために「企業のビジネスモデルを反映した温室効果ガスの権利に関する会計(Accounting of GHG Emission Rights reflecting companies’ business models)」を公表した。このANCによる提案では、企業のビジネスモデルを、①生産ビジネスモデル、②トレーディング・ビジネスモデルのいずれかに分類し、それぞれについて以下の会計処理とすることを提案している。例えば、排出権の購入が、自らの生産に際してのCO2排出に伴う法令順守を目的とすものであれば①、売買からの利益獲得を目的とするものである場合は②となる。
①生産ビジネスモデル
②トレーディング・ビジネスモデル
本IFASS会議においてEFRAGは、上記のANCの提案に対するコメント・レター案について説明を行った。
コメント・レター案の特徴は、企業を「排出者(emitter)」と「トレーダー(trader)」に分けて、それぞれの会計処理を分けている点である。ここで、排出者は、法令等の遵守と生産コストの安定を目的として排出権取引を行う者をいう。トレーダーは、短期的な価格変動を利用して利益を最大化することを目的として排出権取引を行う者をいう。
以下では、EFRAGのコメント・レター案における排出者に関する会計処理の概要を記載する。
この説明に対して、イタリアの代表者は、自国では本件に関する基準があると述べた。オーストラリアの代表者は、期待加重平均による負債の測定について、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の改正を望んでいるのか質問した。中国の代表者は、排出者とトレーダーを区別するのは容易ではないと懸念を示した。また、FASBの代表者は、OCIの使用について疑念を示した。
このセッションでは、2012年10月にチューリッヒで開催されたIFASS会議の内容等に対するアンケート結果の報告や、2014年3月にインドでIFASS会議が開催されることが報告された。
また、IFASSの新議長の選出について、2012年3月にクアラルンプールで開催されたIFASS会議で合意された方法によって行われ
ることが合意された。
IASBのシニア・ディレクターから、IFRS財団のトラスティーの戦略及びガバナンス、IASBの作業計画について説明がなされた。
説明の中で、いくつかの狭い範囲を修正するプロジェクトがIASBの作業計画に追加されたことについて触れられた。デュー・プロセス・ハンドブックの改訂があったものの、年次改善を行う条件は、狭い範囲の修正を行う条件と異なり、変更されていない。狭い範囲を修正するプロジェクトは、IASBが利害関係者の懸念に対してより積極的に応えようとするものであると説明された。
この説明に対して、イタリアの代表者は、狭い範囲の修正は大きなプロジェクトにつながることがあるとの懸念が示された。EFRAGの代表者は、イタリアの代表者のコメントに同意し、狭い範囲の修正は、他の基準との間で問題を生じさせることがあるとコメントした。
IASBの作業計画に関しては、収益認識、リース、保険、マクロ・ヘッジ、金融商品の分類及び測定、減損、農業、料金規制事業、概念フレームワークなどの各プロジェクトの状況が説明された。また、IFRS第3号「企業結合」とIFRS第8号「事業セグメント」の適用後レビューについて説明された。
質疑応答において、加藤前副委員長は、収益認識プロジェクトに関して暫定決定事項が基準化される際に実際どのような文言になるのかを懸念しており、そのため、フェータル・フロー・レビューだけでは不十分ではないかと発言した。また、デリバティブ契約の更改とヘッジ会計の継続に関する公開草案の期間が30日であったことに関して、翻訳の関係もあり30日では短すぎるので、そのような短期間のパブリック・コメント期間はできるだけ避けるべきであると指摘した。
FASBの代表者は、IASBとFASBが収益認識についてコンバージョンした基準を出すことができて非常に満足していると発言した。その上で、利害関係者が収益認識の基準について見解を交わすことができるように、利用者、作成者、監査人を含めたグループを組成する予定であると説明した。
カナダの代表者からは、IASBから提案されたIFRS第11号「共同支配の取決め」に関する教育文書は、教育的な内容を超えるものであり、解釈に踏み込んでいるとの指摘があった。これに対してIASBのシニア・ディレクターから、米国の利害関係者から同様のコメントを受けており、提案された文書は公表されない旨の説明があった。
イタリアのOICとASBJは、共同で行っているのれんの償却及び減損に関する調査のフィードバックについて説明した。
このプロジェクトは、EFRAGとOICがIFRS第3号「企業結合」の適用後レビューに貢献するために始めたものであり、ASBJは2012 年春のIFASS会議の後からプロジェクトに参加している。
このプロジェクトにおいて、2つの調査が実施された。1つはEFRAGとOICが国際的に実施したものであり、もう1つはASBJが日本国内で実施したものである。この2つの調査結果については、2012年秋のIFASS会議において紹介された。
2つの調査によると、見解は分かれているものの、のれんの償却を廃止したことは未だに議論となっていることを示していた。
また、本IFASS会議においては、学術研究に関する調査結果も報告された。学術研究における見解もばらつきがあり、のれんの償却を批判する論文もあれば、減損のみのアプローチを批判する論文もあった。
今後のプロジェクトの進め方について、のれんの代替的会計処理に関して①減損テストに関する現行のルールを改善する、②減損テストに加えてのれんの償却を再導入する、③IAS第36号で要求されている開示を改善する、の3つの観点から調査していく予定であると説明された。
質疑応答において、オーストラリアの代表者から、のれんの償却が正しい方向性だとは確信できないこと、学術論文の調査範囲が限定的であるため範囲を広げて調査すべきであることについてコメントがあった。また、複数の代表者から、のれんの開示については基準自体の問題ではなく、基準を遵守しているかどうかの問題であるとの意見が出された。
FASBの代表者からは、作成者、監査人がそれぞれ専門家を利用するため、基準を遵守するコストが限界点に達しているという指摘がされた。また、のれんの即時償却についても検討すべきとのコメントがされた。
IASBの代表者からは、のれんの会計処理を考える場合、受託責任(スチュワードシップ)が重要な側面であるとの指摘がされた。
OICの代表者から、今回の調査は課題を整理しているのみであり、特に提案を行っているものではないという発言がされた上で、今後の調査結果を再度報告したいという総括がされた。
なお、本IFASS会議後、OICとEFRAGにより実施された調査のフィードバック・レポートは2013年6月に公表されており、ASBJによるフィードバック文書も2013年7月に公表されている。
2012年6月に公表されたリサーチ文書「営利企業の財務報告に関する測定フレームワークに向けて(Towards a Measurement Framework for Financial Reporting by Profit-Oriented Entities)」は、カナダ会計基準審議会(Accounting Standards Board;AcSB)の要請によりカナダ勅許会計士協会(CICA)より公表されたものであり、IASB及びFASBが概念フレームワーク・プロジェクトを進める上でのインプットの提供を目的としていた。このリサーチ文書については、前回のIFASS会議においては、著者であるAlex Milburn博士から内容が説明された。当該リサーチ文書の主な内容は以下のとおりである。
本IFASS会議においては、当該リサーチ文書に対するフィードバックが説明されたが、Milburn博士が引退したため、簡単な説明に留まった。AcSBの代表者からは、Milburn博士のアウトリーチに協力してくれた方々への謝意が述べられた。
オーストラリア及びFASBの代表者からは、Milburn博士の測定フレームワークに関する功績を讃えるコメントが寄せられた。IFASS議長は、ビジネスモデルの観点から測定の課題を検討する学術的な関心があり、Milburn博士のペーパーを適切な関係者に回付したと発言した。
AOSSGからは、議長国であるオーストラリアから、AOSSGの概略及び最近の活動内容として、ネパールに設置したIFRS Centre for Excellenceの近況、ASAFの設立に対応してASAF作業部会を立ち上げたこと、6月に非公式会議及び11月に年次総会が開催されること等が説明された。
EFRAGからは、IASBのコンサルテーション・プロセスに参加していること、ヨーロッパでのフィールドワークの状況、ASAFに関連して積極的に活動していることなどの最近の活動が紹介された。
GLASSからは、最近の活動報告として、IASBの公開草案に対するコメント・レターの提出等について説明された。また、今後の課題として、GLASSは14か国から構成されているが、より多くの国に加盟してもらうこと、IASBの作業への貢献に関してIASBからのフィードバックをメンバーに伝えることが挙げられた。
PAFAからは、2013年5月にPAFA基準設定主体フォーラムがガーナで開催する予定であることなどが紹介された。PAFAの代表者は、アフリカの基準設定能力を向上する必要性があり、そのためには多くのことを実施しなければならないと述べた。
IFASS議長は、PAFAの代表者が初めてIFASSに参加したことに関して歓迎の意を述べた他、有用と考える場合にはIFASSメン
バーに助けを求めてほしいと発言した。
シエラレオーネの代表者から、IFRS for SMEsに関するスピーチが行われた。スピーチの中で、IFRS for SMEsのセクション3.3において「財務諸表がこのIFRSのすべての要求事項に準拠していない限り、財務諸表がIFRS for SMEsに準拠していると記載してはならない。」と定められていることが、IFRS for SMEsの適用を妨げているという懸念が示された。また、IFRS for SMEsの主要な部分を使用していても、各国においてそれぞれ特有の事情に応じた修正を行っているため、IFRS for SMEsに準拠していると記載できない結果となっており、このことは長期的な観点において基準の存続にかかわるとの発言がされた。
さらに、幾つかの国又は地域の代表者からIFRS for SMEsを修正した上で自国基準として使っている発言があった一方、他の国又は地域の代表者からはIFRS for SMEsを使うことについて自国の関係者から支持を受けていないという発言があった。
IASBにおける概念フレームワークに関する審議の開始に伴い、EFRAG及びフランス、ドイツ、イタリア、英国の会計基準設定主体が共同で、欧州における概念フレームワークへの議論を喚起すると共に、IASBの概念フレームワークに欧州の関係者の意見を反映することを目的に「より良いフレームワークに向けて(Getting a Better Framework)」と銘打ったプロジェクトを開始したことを報告している。
当プロジェクトにおける具体的な取組みとして、次の事項について説明がされた。
①戦略ペーパー「より良いフレームワークに向けて:我々の戦略(Getting a Better Framework:Our Strategy)」の公表
2013年1月に、IASBにおける概念フレームワークの現状と問題点、今後IASBによって議論されるであろう(されるべきであると考える)論点を概括し、今後の当プロジェクトにおける戦略を示す戦略ペーパー「より良いフレームワークに向けて:我々の戦略」を公表した。
②Bulletinの公表
当プロジェクトの要として、Bulletinの公表が掲げられている。Bulletinは、概念フレームワークに関する重要な論点を説明するための、技術的な用語を排し、設例を交えた、簡潔で手に取りやすい文書であるとされており、各論点に対する暫定的な見解を記載した上で、関係者にコメントを募る予定とされている。このコメントを基に当プロジェクトとしての最終的な見解を形成すとのことである。
2013年4月に「慎重性(Prudence)」、「財務情報の信頼性(Reliability of financial information)」及び「不確実性(Uncertainty)」の3つのBulletinが公表されている。
③ニュースレターの発行、アウトリーチの実施
本プロジェクトでは、IASBの概念フレームワークに関する議論の進展に関して、関係者へのよりタイムリーな情報提供を目的としたニュースレターを公表すると共に、IASBのディスカッション・ペーパー公表後の秋を目途に、欧州の関係者に対してのアウトリーチを実施する予定である。
EFRAG、フランスのANC及び英国のFRCは、財務諸表におけるビジネスモデルの役割について共同でプロジェクトを進めている。これは、財務諸表に対するビジネスモデルの意義を探求するものである。2013年の第2四半期に討議資料を公開する予定である。
ビジネスモデルについては、IFRS第9号金融商品」(2009年)、IAS第12号の修正(2010年)、保険契約の公開草案(2010年)、収益認識の公開草案(2011年)及びIFRS第9号への限定的修正の公開草案(2012年)などで明示的に使われている他、IAS第2号「棚卸資産」やIAS第40号「投資不動産」などにおいて黙示的に使われている。
“ビジネスモデル”という用語に関して共通理解はないため、討議資料においては、キャッシュフローの生成と価値創造に基づいた定義を用いている。
概念フレームワークは、ビジネスモデルを取り扱っていないが、EFRAGは、概念フレームワークにビジネスモデルが含まれるべきであり、認識、測定及び表示において役割を果たすと考えている。
この説明に対して、加藤前副委員長は、ビジネスモデルと経営者の意図との区分が不明確であるとコメントした。FASBの代表者は、ビジネスモデルの意味と集約のレベルがうまく理解できないと発言し、会計単位との関係について懸念を示した上で、ビジネスモデルではなく、価値の創造(value creation)という用語を使用することを提案した。また、カナダの代表者は、このテーマに関する議論は必要であり、概念フレームワークとの関連で議論されるべきであると発言した。
ASBJは、2012年11月にIASBのスタッフからその他の包括利益(OCI)の使用状況に関する調査の依頼を受けた。この調査は、IASBが概念フレームワークの議論を行う前提として、IFRSに準拠して作成された連結財務諸表において、OCIが国際的にどのように使用されているか理解することを目的としたものである。
ASBJは、2012年11月から2013年2月にわたって調査を行い、2013年2月のIASBボード会議で報告を行った。今回のIFASS会議においても、同一の内容を報告した。
この説明に対し、IFASS議長からは、この結果はIASBによる概念フレームワークにおけるOCIの議論に活用されることになろうとの発言があった。
また、加藤前副委員長が2013年3月に退任されたことから最後のIFASS会議への参加となることを受けて、IFASS議長からこれまでの加藤前副委員長の貢献を讃えて感謝の意が表明された。
今回のIFASS会議は、ASAFが発足してから最初の会議であったため、今後のIFASS会議のあり方が議論されたが、両者は重複するものでなくIFASS会議は今後も継続的に開催されることになった。
次回は、2013年9月にベルギーで開催予定である。