2021年上期 IFASS会議報告

Ⅰ はじめに

会計基準設定主体国際フォーラム(International Forum of Accounting Standard Setters; IFASS)は、各法域の会計基準設定主
体及び会計基準に関連する諸問題に対する関心の高いその他の組織による非公式のネットワークである。2019年春の会議後から、IFASS議長を企業会計基準委員会(ASBJ)の川西副委員長、事務局長をASBJの丸岡アシスタント・ディレクターが務めている。IFASS会議は、毎年、春と秋の2回開催されており、2020年秋の会議に続き、新型コロナウイルス感染症(COVID─19)パンデミックにより、ウェブ会議の形式で開催された。会議には各法域の会計基準設定主体(約33団体)からの代表者に加えて、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)や他の地域グループの代表者、国際公会計基準審議会(IPSASB)など約150名が参加した。国際会計基準審議会(IASB)からはハンス・フーガーホースト議長からのビデオメッセージによる挨拶が寄せられ、スー・ロイド副議長ほかが参加した。ASBJからは、小賀坂委員長及び矢農常勤委員ほかが参加した。

Ⅱ 会議の概要

議題 担当
2021年3月8日
歓迎と開会の挨拶 IFASS議長
1 非財務報告に関するEFRAGの取組み フランス
2 開示に関する取組み─中小企業(SMEs)である子会社 IASB
3 継続企業 オーストラリア、ニュージーランド
4 個別財務諸表 個別財務諸表ワーキング・グループ
5 企業報告の将来像 英国
6 IFRS第10号、IFRS第11号、IFRS第12号の適用後レビュー インド
2021年3月9日
7 非営利組織向け国際財務報告基準─プロジェクト・アップデート 国際非営利会計基準(IFR4NPO)プロジェクトチーム
8 アジェンダ協議 IASB、EFRAG
9 共通支配下の企業結合 IASB
10 IASB議長の退任挨拶 IASB議長
閉会の挨拶 IFASS議長

1.非財務報告に関するEFRAGの取組み

本セッションでは、EFRAGのEU非財務報告基準設定のための準備作業に関するプロジェクト・タスクフォース(PTF)の議長から、欧州委員会(EC)の非財務報告に関する取組みとPTFについての紹介がなされた。ECは、非財務情報開示指令(NFRD)の改正に取り組んでおり、⑴ EU非財務報告基準設定のための準備作業をEFRAGの欧州企業報告ラボへ、⑵ EFRAGのガバナンスの改正をEFRAG議長へ、それぞれ要請している。

非財務報告の実務は現在、様々な理由から利用者の期待やニーズを満たしておらず、ECが行ったNFRDの実施に関する分析では、非財務情報開示の目的適合性、比較可能性、信頼性を高めるために是正措置が必要な複数の欠点が浮き彫りになっており、PTFの目的は、現行の規制や実務、制約や機会に関する技術的な分析を行い、将来の欧州の非財務報告基準の範囲、内容、構造についてECに提言することであると説明された。PTFは、その分析において、ダブル・マテリアリティの視点を含むNFRDの既存の要求事項と、欧州及びグローバルな既存の基準設定イニシアティブの特徴を考慮していると説明された。プロジェクトは、⑴評価、⑵提案、及び⑶アウトリーチと結論、の3つの段階から構成され、最終報告書がECへ提出されたと報告された。

最終報告書では、サステナビリティ報告の目的は、目的適合性があり(relevant)、忠実で(faithful)、比較可能で(comparable)、信頼できる(reliable)情報を提供することとされ、4つのパートから構成される54の提言を含んでおり、2022年秋までに最初の基準を起草するという計画が示されていることが紹介された。

その後の質疑応答では、IFASS参加者は、⑴欧州サステナブル基準(ESS)を誰が設定するのか、⑵ IFRS財団が設立予定の新しいサステナビリティ基準審議会(SSB)とESSとの関係性、⑶サステナビリティ報告だけでなく、より広範なESG報告をサポートする共通の概念的枠組みの重要性、⑷サステナビリティ報告で使用される情報の成熟度の向上の必要性、及び⑸提供される情報の品質保証とその運用方法、等について議論した。

また、IFRS財団の評議員会がサステナビリティに関する取組みの今後の戦略的方向性と次へのステップを発表したことに関連して、本セッションに参加したスー・ロイドIASB副議長から、SSBは他の法域の基準設定主体を含む他の主要な利害関係者と協力してグローバルで一貫性のある比較可能な情報を提供することを望んでおり、EUのアイデアとIFRS財団の評議員会の決定の背景にある哲学は一致しており、多くの共通点があるように思われるとの意見が聞かれた。

    2.アジェンダ協議

    本セッションでは、最初にIASBスタッフから、情報要請「第3次アジェンダ協議」(以下「情報要請」という。)について紹介がなされた。情報要請は、⑴ IASB の活動の戦略的方向性及びバランス、⑵作業計画に追加するプロジェクトを評価する判断規準、及び⑶財務報告上の論点の優先順位、の3つに焦点を当て、2021年3月に公表、2021年第3四半期のコメント期限後のIASB での審議を経て、2022年前半に2022年から2026年までの作業計画とフィードバック・ステートメントが公表される予定であると説明された。直近で話題となっているサステナビリティ報告基準の設定に関しては、IFRS財団の評議員会のレビュー結果がIASBの作業計画の範囲に影響を与える場合、IASBの優先事項と作業計画を最終決定するにあたり考慮されるとの説明がなされた。

    続いて、EFRAGの代表者から、情報要請に対するEFRAGの予備的見解が紹介された。IASBは進行中の作業計画の最終化及び適用後レビューをタイムリーに行うことを優先して、追加のリソースを確保できる範囲でのみ、追加するプロジェクトを検討すべきであるという意見が紹介された。また、プロジェクトの優先順位を決める際は、リソースと能力、論点が将来も一般的であるか、IFRS解釈指針委員会を通じて対処した方がよい問題かどうか、といった点を考慮すべきことであるとの意見も紹介された。考えられる新規プロジェクトとして、キャッシュ・フロー計算書、無形資産(会計処理されていない無形資産と開示の充実)、気候変動(サステナブルファイナンス)と気候関連情報の開示、財務報告と非財務報告の結合性、デジタルレポーティング(基準間の影響評価を含む。)、暗号通貨、継続企業、OCIリサイクリング、個別財務諸表、変動又は条件付対価、マイナス金利、IAS第41号「農業」、及びIAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」が示された。

    IASBの情報要請に関するアウトリーチ活動についての質問及びEFRAGの予備的見解に対して、IFASS参加者は、⑴アジェンダ協議で考えられるプロジェクトに含まれるIAS第23号「借入コスト」の見直しの重要性、⑵COVID─19 パンデミックによって利害関係者の優先順位や見解が変化した可能性、⑶現在のバーチャルな勤務環境では広範なアウトリーチが可能であること、及び⑷意見を十分に把握するために現地の言語でアウトリーチを行うこと、等について議論を行った。

    3.共通支配下の企業結合

    本セッションは、⑴ IASBによるディスカッション・ペーパー(DP/2020/11)「共通支配下の企業結合」(以下「DP」という。)の紹介、⑵グループに分かれてのディスカッション、及び⑶各グループでの議論を踏まえた全体会議、の3部構成で実施された。

    最初に、IASBスタッフがDPの紹介を行い、⑴プロジェクトの概要、⑵適用する測定方法、⑶取得法の適用方法、⑷簿価法の適用方法、及び⑸結論について説明がなされた。DPの目的は、実務の多様性を減らして比較可能性を向上させるとともに、コストと便益のトレードオフを前提とし、すべての共通支配下の企業結合について、より良い情報が提供されるようにすることであると説明された。IASBは、類似する取引への類似した情報の提供、共通の情報ニーズ、複雑性、会計上の裁量の機会等を考慮し、移転先企業の財務諸表の主要な利用者にとっての有用な情報に焦点を当て、取得法と簿価法のいずれか一方をすべての共通支配下の企業結合に適用すべきではなく、非支配株主が影響を受ける場合には取得法を適用し(一部の免除と例外を含む。)、それ以外の場合には簿価法を適用すべきであるとする予備的見解が説明された。

    続いて、IFASS参加者は5つのグループに分かれ、⑴どの測定方法を選択するか、⑵取得法をどのように適用するか、及び⑶簿価法をどのように適用するか、についてグループディスカッションを行い、その後の全体会議で、各グループのファシリテーターからグループで議論された内容が報告された。

    測定方法の選択に関しては、各ファシリテーターより、IASBの予備的見解を支持する意見が各グループで多く聞かれたことが報告された一方で、非支配株主の情報ニーズに焦点を当て過ぎているという意見や企業グループ内の最終的な支配が変化していないことを考慮すべきという意見があったことが報告された。その他に、⑴免除要件の実行可能性や監査方法への懸念、⑵例外規定が任意でなく強制である理由やそもそも例外規定が必要なのかどうか、⑶企業が転換社債を発行している場合の適用方法をIASBは考慮したかどうか、及び⑷企業が公的債務を抱えている場合にも取得法が適切ではないか、といった意見が聞かれたことが紹介された。

    取得法の適用方法については、DPの提案を概ね支持する意見が各グループで多かったが、一部の参加者からは、⑴資本からの分配を認識しない一方で、資本への拠出を認識する会計処理は整合しておらず、IFRS第3号との類似性から取得法を適用するならば、会計処理もIFRS第3号に合わせるべき、⑵取得した資産及び負債の公正価値を支払対価が下回る過少支払いについて、そのすべてが資本への拠出ではなく、場合によっては「幸運な取得(Lucky buy)」であって利益を認識すべきである可能性もある、等の意見があったことが各ファシリテーターから紹介された。

    簿価法の適用方法に関しては、各ファシリテーターから、結合前情報の修正再表示について、⑴有用である、⑵仮想的(hypothetical)である、⑶いくつかの国・地域では現地ルールに基づいて修正再表示は既に行われている、及び⑷結合前情報の修正再表示は任意とすべき、等の意見がIFASS参加者から聞かれたことが紹介された。

    4 .IASB 議長の退任挨拶

    ハンス・フーガーホーストIASB議長から、2021年6月の議長退任にあたって、IFASS参加者に向けた挨拶がなされた。IASB議長から、これまでの10年間の任期の振り返りとともに、基準設定における独立性の重要性、及びその独立性の確保と維持に向けた努力の必要性、現在の不確実な状況時こそ適切な会計が最も必要とされること等が伝えられた。IFASSの活動に対する各国の会計基準設定主体の貢献への感謝と、後任のアンドレアス・バーコウ氏への支援の依頼とともに、退任挨拶は締めくくられた。

      Ⅲ.おわりに

      次回のIFASS会議は2021年9月に予定され、COVID─19 パンデミックの影響を踏まえ、引き続きウェブ会議形式による開催を予定している。

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