IASB、退職後給付の会計処理の透明性を高める提案について議論を開始する
2008年3月27日
国際財務会計審議会（IASB）は本日、一般からのコメントを募集するためにIAS第19号「従業員給付」に関するディスカッション・ペーパーを公表した。本ペーパーは、年金を含めた退職後給付の一部の会計処理を、どのように改善しうるかについての、IASBの予備的見解を示している。
本ディスカッション・ペーパー（IASBの従業員給付ワーキング・グループと協議しながら開発されたものである）は、IAS第19号で示されている会計モデルは不適当であり見直されるべきだとする、多方面の関係者から表明された主要な懸念を扱っている。
関係者は、次の点を指摘している。
- 保険数理差損益の遅延認識は、財政状態計算書の金額について誤解を招くものにしている。
- 遅延認識に関する複数の選択肢があることにより、企業間の比較可能性が乏しくなっている。
- 給付約定の定義が明瞭でないため、拠出について資産又は指標に連動した約定リターンを含んだ給付約定について不整合や比較可能性の乏しさが生じている。
- 規定されている測定方法は、拠出について資産又は指標に連動した約定リターンを含んだ給付約定については不適当である。
これらの主な論点をどのように扱うべきかについての、IASBの予備的な見解は次のとおりである。
- 確定給付制度における保険数理差損益の遅延認識の選択肢を取り除く。
- 給付約定の分類として、拠出ベース約定と確定給付約定という新たな分類方法を採用し、拠出ベース約定については新たな測定属性を取り入れる。
本ディスカッション・ペーパーの紹介にあたり、IASBの議長のDavid Tweedie卿は次のように述べた。
「年金に関する会計は非常に重大性のある複雑な領域である。世界の一流企業80社の負債の合計だけで、約7,000億ポンドになると見積られている。場合によっては、年金負債が当該企業の時価総額を超えることさえある。企業の財務諸表は投資家、アナリスト及び（その他の）企業に対して、明瞭で、信頼性を有し、比較可能性のある、企業の年金債務の情報を提供しなければならない。財務報告のこの領域を改善する方法を見出すことは、我々全員の利益になるものであり、退職後給付に関する本ディスカッション・ペーパーはその出発点である。」
IASBは本ディスカッション・ペーパーに対するコメントを、2008年9月26日まで求めている。このプロジェクトの更なる詳細については、プロジェクトのウェブ・ページを参照いただきたい。
IASBは、改訂された基準を2011年までに公表することを目標に、この論点を再審議して、IAS第19号の改訂を提案する公開草案を公表することを予定している。本ディスカッション・ペーパーは、eIFRS購読者においては本日から入手可能であり、4月7日以降は、ウェブサイトから無料で入手可能となる。
eIFRSの購読希望者はwww.iasb.orgのオンラインショップ、又は下記にお問い合わせいただきたい。
IASC Foundation Publications Department,
30 Cannon Street, London EC4M 6XH, United Kingdom.
Tel: +44 (0)20 7332 2730,
Fax: +44 (0)20 7332 2749,
Email: publications@iasb.org
印刷物（ISBN 978-1-905590-62-9）は、IASCF出版部から￡10（郵送料は別）で間もなく入手可能となる。
プレス関係の問い合わせ先
Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6472,
Email: mbyatt@iasb.org
Sonja Horn, Communications Adviser, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6463,
Email: shorn@iasb.org
専門的な内容に関する問い合わせ先
Wayne Upton, Director of Research, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6449,
Email: ehickey@iasb.org
Anne McGeachin, Senior Project Manager, IASB
Telephone: +44 (0)1225 426 517
Email: amcgeachin@iasb.org
Jenny Lee, Project Manager, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6479
Email: jlee@iasb.org
「ディスカッション・ペーパーIAS第19号『従業員給付』の改訂に関する予備的見解」の日本語訳は以下よりダウンロードすることが可能です。本訳は、企業会計基準委員会スタッフによる参考のための資料です。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。
なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですのであらかじめご了承ください。
当該プロジェクトに関連する情報は、IASBのウェブサイトの中の退職後給付（年金を含む）プロジェクトのページをご参照ください。