ASBJ 企業会計基準委員会

IFRIC、在外営業活動体に対する純投資のヘッジに関するガイダンスを公表する(IFRIC解釈指針書第16号)

IASBプレスリリース 2008年7月3日

国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)(*1)は本日、解釈指針書第16号「在外営業活動体に対する純投資のヘッジ」を公表した。

IFRICは、企業の連結財務諸表における在外営業活動体に対する純投資のヘッジの会計処理に関するガイダンスを求められた。国際財務報告基準(IFRS)によればどのリスクがヘッジ会計に適格なのかについての見解の相違により、実務がまちまちとなっていた。

関係者は、3つの主要な論点を明確化することを要望していた。第1に、リスクが発生するのは、在外営業活動体と親企業の機能通貨に対する為替エクスポージャーからなのか、あるいは在外営業活動体の機能通貨と親企業の連結財務諸表の表示通貨に対する為替エクスポージャーからなのか。第2に、グループ内のどの企業が在外営業活動体の純投資のヘッジにおけるヘッジ手段を保有できるのか、特に、在外営業活動体の純投資を保有する親企業がヘッジ手段も保有しなければならないのか。第3に、企業が投資を処分する際に、ヘッジ手段及びヘッジ対象の双方について資本から当期損益に組替修正すべき金額をどのように決定すべきなのか。

IFRIC第16号は、これらの論点を明確化し、次のように述べている。

  • 表示通貨は企業がヘッジ会計を適用しうるエクスポージャーを生じさせない。したがって、親企業は、自身と在外営業活動体の機能通貨の差異から発生した為替差額のみをヘッジ対象リスクとして指定することができる。
  • ヘッジ手段は、グループ内のいかなる企業(複数でもよい)が保有してもよい。
  • 「ヘッジ手段」については、為替換算調整勘定から当期損益に組替修正する必要のある金額を決定するために、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」を適用しなければならないが、「ヘッジ対象」については、IAS第21号「外国為替レート変動の影響」を適用しなければならない。

IFRIC第16号は、在外営業活動体に対する純投資から発生する外国為替リスクをヘッジしていて、IAS第39号に従ったヘッジ会計に適格となることを望む企業に適用される。他のタイプのヘッジ会計には適用されない。

予想される実務上の主な変更点は、在外営業活動体の機能通貨と親企業の連結財務諸表の表示通貨との外国為替差額のヘッジに対して、企業がヘッジ会計を適用できなくなることである。

IFRICは、ヘッジ関係の開始時に企業が適切な文書を作成する際に困難があることを認識しており、そのため、このガイダンスを将来に向かって適用することを規定している。本解釈指針書は、2008年10月1日以降に開始する事業年度から発効する。

IFRIC第16号の紹介として、Robert Garnett IFRIC議長兼IASB理事は、次のように述べた。

「IAS第39号及びIAS第21号は、在外営業活動体に対する純投資のヘッジに対する規定の適用について限定的なガイダンスを提供している。この解釈指針により、IFRICは企業がこれらの基準を首尾一貫して適用できるようにするための実務上のガイダンスを提供した。」

eIFRS購読者は本日からIFRIC第16号「在外営業活動体に対する純投資のヘッジ」を入手することができるeIFRSの購読希望者はwww.iasb.orgのオンラインショップ、又は下記にお問い合わせいただきたい。

IASC Foundation Publications Department,
30 Cannon Street, London EC4M 6XH, United Kingdom.
Tel: +44 (0)20 7332 2730
Fax +44 (0)20 7332 2749
Email: publications@iasb.org
Web: www.iasb.org

IFRIC第16号についてのより詳細な情報は、www.iasb.orgのプロジェクトのウェブページを参照していただきたい。

プレス関係の問い合わせ先

Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6472,
Email: mbyatt@iasb.org

Sonja Horn, Communications Adviser, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6463,
Email: shorn@iasb.org

専門的な内容に関する問い合わせ先

Robert Garnett, Chairman, IFRIC
Telephone: +44 (0)20 7246 6923,
Email: rgarnett@iasb.org

Masashi Oki(大木正志), Practice Fellow, IASB,
Telephone:+44 (0)20 7246 6924,
Email: moki@iasb.org

編集担当者への注釈

IFRIC第16号について

2007年7月に、IFRICは解釈指針案D22号「在外営業活動体に対する純投資のヘッジ」を公表した。本提案は、2007年10月までコメント募集のために公開された。2008年1月及び3月の会議で、IFRICは、回答者のコメントを踏まえて論点を再審議した。2008年5月の会議で、IFRICは再審議を完了し、投票を行い、合意事項を確認した。

IFRICについて

IFRICは、2002年2月に第1回会合を開催した。IFRICは、出身国や職業経験の異なる14人(全員非常勤)の議決権を有する委員で構成され、議決権を有さない議長のもと一年に約6回会議を開催している。IFRICの原則的な役割は、権威ある指針がないことにより異なった取扱いや容認できない取扱いを受ける可能性があるような会計上の問題について、現在のIFRS及びIASBのフレームワークの文脈の中で、適切な会計処理について合意に到達することを目的として、タイムリーに検討することにある。解釈指針の開発にあたり、IFRICは、IFRICと同様の各国の解釈指針委員会と緊密な連携をとって作業を行っている。

国際会計基準審議会(IASB)について

国際会計基準審議会(IASB)は、ロンドンを拠点に、2001年に業務を開始した。評議員会、IASC財団により集められた主要な会計事務所、世界中の民間の金融機関及び事業会社、中央及び開発銀行、及び他の国際的及び専門家組織からの寄付により資金をまかなっている。その14人のメンバー(うち12人は常勤)は、9か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している。

IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。


  1. IFRICは、国際会計基準審議会(IASB)の解釈指針作成部門である。