ASBJ 企業会計基準委員会

IASB、金融商品の開示を強化(IFRS第7号改訂)

2009年3月5日

国際会計基準審議会(IASB)は、本日、公正価値測定に関する開示規定を改善し、金融商品にかかわる流動性リスクに関する開示に対する現行の原則を強化する改訂を公表した。

今回の改訂は、金融危機に対するIASBの集中的な対応の一環となるものであり、透明性の改善と会計処理の指針の強化を目的としたG20の決定に対応するものである。この改善は、市場がもはや活発でない場合の金融商品の公正価値の測定と開示に関するIASBの専門家諮問パネルの議論も反映している。

政策立案者、多くの投資家グループ及び他の利害関係者からの要請に対応して、IASBは、国際財務報告基準(IFRS)の開示規定を米国基準にさらに近づけている。今回のIFRS第7号「金融商品:開示」の改訂は、公正価値測定の開示に3段階のヒエラルキーを導入し、公正価値測定の相対的な信頼性に関する追加的な開示の提供を企業に求めている。これらの開示は、公正価値測定の影響に関する企業間の比較可能性の改善に役立つであろう。

さらに、今回の改訂は、流動性リスクの開示についての現行規定を明確化し、強化している。これは、開示される情報が、金融商品から生じる流動性リスクの性質と程度及び企業がそのリスクをどのように管理しているかを,企業の財務諸表の利用者が評価できるようなものとなることを目的としている。

今回のIFRS第7号の改訂は、2009年1月1日以後開始する事業年度に適用する。しかし、適用初年度において前年度分の比較開示を行うことは要求されていない。

本提案の紹介として、IASB議長David Tweedie卿は次のように述べた。

「金融危機で明らかになったことは、企業がどのように金融商品の公正価値を算定しているのかについての明確な理解が、特に利用可能な情報が限られている場合には、金融市場に対する信頼の維持にとって非常に重要だということである。追加的な開示規定と3段階のヒエラルキーは、そうした情報の明確性を増すのに役立つであろう。今回の改訂は、金融商品に関連した流動性リスクに関する開示も強化している。その提案は、IASBの専門家諮問パネルから受けた助言が基礎となっている。」

信用危機に対応したIASBが行った対策に関するさらに詳細な情報については、www.iasb.orgを参照いただきたい。「金融商品の開示の改善」(IFRS第7号改訂)の印刷版(ISBN978-1-907026-00-3)は、IASC財団出版部から£10.00(及び郵送料)で、間もなく購入可能となる予定である。

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編集担当者への注釈

国際会計基準審議会(IASB)について

国際会計基準審議会(IASB)は、ロンドンを拠点とし、2001年に活動を開始した。主要な会計事務所、世界中の民間金融機関及び事業会社、中央及び開発銀行、並びに他の国際的な専門家組織から、国際会計基準委員会(IASC)財団の評議員会により集められた寄付により資金を調達している。IASBは、現在9カ国から集められ、さまざまな専門的な背景を持つ、最大16名のメンバー(うち13名は常勤)で構成される。IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。

公正価値測定開示に対する3段階のヒエラルキーについて

本改訂により求められる開示は、測定を行う際に用いられるインプットの重要性を反映する公正価値ヒエラルキーを用いて分類される。公正価値ヒエラルキーには、以下のレベルがある。

  1. 同一の資産又は負債についての活発な市場における公表価格(修正されていないもの)(レベル1)
  2. レベル1に含まれる公表価格以外のインプットのうち、直接に(すなわち価格として)又は間接的に(すなわち価格からの算出により)、資産又は負債について観察可能なもの(レベル2)
  3. 資産又は負債に関するインプットのうち、観察可能な市場データに基づいていないもの(観察不能なインプット)(レベル3)

公正価値ヒエラルキーのレベル3の公正価値測定について、追加的な開示が求められる。