ASBJ 企業会計基準委員会

IASBとFASB、リース会計についての将来の基準に関する意見募集手続を開始

2009年3月19日

 国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、本日、予備的見解を示した共同のディスカッション・ペーパーを公表し、リース会計に関する意見募集手続を開始した。

ディスカッション・ペーパー「リース:予備的見解」は、投資家及び他の財務諸表の利用者により提起された国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準 (GAAP)の下でのリース契約の処理に関する懸念に対応するものである。

世界リース年鑑2009によれば、2007年におけるリース取引の規模は、年額7,600億USドルにも上るが、そのリース契約の多くは企業の財政状態計算書(貸借対照表)に表れていない。これは、IFRS及びUS GAAPではリースを2つのカテゴリー(ファイナンス・リース(US GAAPではキャピタル・リース)及びオペレーティング・リース)に区分し、ファイナンス・リースから生じる資産及び負債のみを財政状態計算書に認識しているからである。オペレーティング・リースにおいて借手は、支払リース料を単にリース期間にわたる費用として認識している。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの会計処理が異なっているため、特に次のような、さまざまな問題が生じている。

  • 財務諸表利用者の多くは、すべてのリース契約は借手の財務諸表において認識されるべき資産及び負債を生じさせると考えている。 したがって、このような利用者は財政状態計算書に計上されている金額を日常的に修正し、オペレーティング・リース契約からもたらされる資産及び負債の影響を評価しようとしている。
  • ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別することは、類似の取引を全く異なるように会計処理することとなる可能性があり、財務諸表の利用者にとっての比較可能性を減少させている。
  • ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの会計処理の相違は、特定のリースの分類を達成するために取引を細工する機会も提供している。

本ディスカッション・ペーパーにおいて、IASBとFASBは、リース会計に対する新しいアプローチの可能性を議論している。 両審議会が提案しているのは、リース会計は、すべてのリースは将来のリース料支払という負債と資産(リース資産を使用する権利)を生じ、それらは企業の財政状態計算書で認識するという原則を基礎とするべきだということである。このアプローチは、リースが業種及び産業を横断して整合的に会計処理されることを確保することを目的としている。

両審議会は、移行の方法や発効日を議論していない。 それらの論点は、本ディスカッション・ペーパーに対するコメントを受け取った後に議論され、次に公表される基準案の公開草案の規定に含まれる。

両審議会は、2008年7月に、借手の会計処理に関連する問題をできる限り迅速に解決するために貸手の会計処理の検討を延期することを決定した。 その結果、本ディスカッション・ペーパーは、主として借手の会計処理を取り扱っている。 しかしながら、貸手の会計処理に関して、将来の基準案で取り扱う必要のあるいくつかの論点も記述している。

本ディスカッション・ペーパーの紹介に当たり、IASB議長David Tweedie卿は次のように述べた。

「金融危機に関連する会計上の論点に世間の注目が集中しているのは当然ではあるが、これは非常に重要なプロジェクトであり、世間の関心が向けられる価値のあるものである。 リースは、多くの企業にとっての重要な資金調達源である。 したがって、利害関係者が、我々の提案をよく理解するために時間を割き、コメントレターの過程を通じて見解を提供することが重要である。 私は、両審議会がこれらの提案を形成することを支援してくれたリース・ワーキング・グループのメンバーにも感謝したい。」

FASBのRobert Herz議長は次のように述べた。

「本ディスカッション・ペーパーに含まれる提案は、リース会計の透明性、信頼性及び有用性を改善することを意図している。我々は、関係者が本ディスカッション・ペーパーをレビューし、これらの提案によって借手の貸借対照表にリース契約から生じる権利及び義務がより良く反映されることとなるかに同意するか否かを我々に知らせることを奨励する。」

本ディスカッション・ペーパーのコメント募集期間は、2009年7月17日までである。

ディスカッション・ペーパー 「リース:予備的見解」は、本日から、www.iasb.orgの‘Open for Comment’セクションで入手可能である。 購読者は、eIFRSsウェブサイトで本文書を見ることもできる。 印刷版(ISBN978-1-905590-7602-7)は、£12.00(及び郵送料)で、間もなくIASC財団出版部より購入可能となる。

IASC Foundation Publications Department,
30 Cannon Street, London EC4M 6XH, United Kingdom.
Tel: +44 (0)20 7332 2730
Fax +44 (0)20 7332 2749
Email: publications@iasb.org
Web: www.iasb.org

「リース:予備的見解」は、http://www.fasb.org/draft/index.shtmlでも入手可能である。 さらに、どんな個人又は組織も、2009年7月17日まで書面による依頼により無料でFASBからディスカッション・ペーパーを1部入手することができる。 FASB Product Code No.DP03を注文していただきたい。 追加及び2009年7月17日以降に適用される印刷版の価格の情報については、下記にお問い合わせいただきたい。

Order Department
Financial Accounting Standards Board
401 Merritt 7, PO Box 5116
Norwalk, CT 06856-5116 USA
Phone: +1 (800) 7480659 or +1 (203) 8470700
Email: fasbpubs@fasb.org

IASBとFASBは、2009年5月に、本ディスカッション・ペーパーを紹介するライブのウェブ・プレゼンテーションをそれぞれ開催する。 ウェブ・プレゼンテーションを聴くための登録方法の詳細は、IASB及びFASBのウェブサイトにしかるべき時に公表される。

プレス関係の問い合わせ先 

Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6472,
Email: mbyatt@iasb.org

Sonja Horn, Communications Adviser, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6463,
Email: shorn@iasb.org

Neal McGarity, Director of Communications, US FASB
Telephone: +1 203 956-5347,
Email: nemcgarity@f-a-f.org

401 Merritt 7, PO Box 5116, Norwalk, Connecticut, 06856-5116, USA

専門的な内容に関する問い合わせ先

Rachel Knubley, Senior Project Manager, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6904,
Email: rknubley@iasb.org

Danielle Zeyher, Project Manager, FASB
Telephone: +1 203 956 5265,
Email: dtzeyher@fasb.org

編集担当者への注釈

国際会計基準審議会(IASB)について

国際会計基準審議会(IASB)は、2001年に設立された国際会計基準委員会(IASC)財団の基準設定機関であり、独立した民間の非営利組織である。IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる意見募集手続を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。その14人のメンバー(うち13人は常勤)は、9か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している。彼らは、IASC 財団の評議員会から選任されるとともに、これに対して説明責任を負っており、専門的な能力と、国際的なビジネス及び市場に関する経験の多様性に関して、選択し得る最良の組み合わせを選択することが要求されている。

米国財務会計基準審議会(FASB)について 

FASBは、1973年以来米国における財務会計及び財務報告基準を設定するための民間部門の機関として指定されている。それらの基準は、財務報告書の作成を規定し、証券取引委員会及び米国公認会計士協会により権威のあるものとして正式に認識されている。投資家、債権者、監査人及びその他の人々は、信頼性、透明性、比較可能性のある財務情報を必要とするため、このような基準は、経済が効率的に機能するには不可欠である。FASBに関する詳細な情報は、ホームページhttp://www.fasb.org/をご参照いただきたい。

ディスカッション・ペーパー「リース:予備的見解」の原文は、IASBのウェブサイトの中のリースプロジェクトのページから入手が可能です。

ディスカッション・ペーパー「リース:予備的見解」の日本語訳は以下よりダウンロードすることが可能です。本訳は、企業会計基準委員会スタッフによる参考のための資料です。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。

なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですのであらかじめご了承ください。

ディスカッション・ペーパー「リース:予備的見解」