ASBJ 企業会計基準委員会

減損に関するIFRIC の議題の採否に関する暫定的な決定

2009年5月21日

国際財務報告解釈委員会(IFRIC)は、本日IFRIC Updateの中で2009年5月7日の会議の概要を発表した。

現行の減損規定に関連する議題の採否に関する暫定決定は、現在の環境下で特に重要な影響があるかもしれないので、eIFRS購読者への発表において、IFRICは、今回の会議で行われた議題の決定に関係者の注意を喚起するための例外的な措置をとった。IFRICは、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」に従った売却可能持分金融商品の減損に関する現行のIFRSの規定で用いられている「著しい又は長期にわたる」という用語の意味と解釈を明確にしてほしいという要請を受けた。当該規定によれば、企業は価値の下落が「著しい又は長期にわたる」場合には、減損を認識しなければならない。

受け取った要請に対応して、IFRICは5月会議においてこの論点を議論した。IFRICは、実務における多様性の一部は、減損規定の適用の一部が基準と整合していないことから生じていることに懸念を抱いた。IFRICは、IASB にIAS第39号を置き替える基準を作成する加速化されたプロジェクトがあるため、本論点を議題に追加しないことを暫定的に決定した。しかし、IFRICは、この暫定的な議題の決定に、それらの不整合のいくつかと規定に対するそれらの準拠性に関するIFRICの結論を示している。

通常のデュー・プロセスに従って、(本論点をIFRICの議題に追加しないとする理由の案を含めた)IFRICの決定は、暫定的であり、6月22日までコメントを募集する。コメントは、e-メール(ifric@iasb.org 宛)で送付いただきたい。

受け取ったコメントは、2009年7月の次回IFRIC会議で検討される。

以下の文章は、国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)から公表されたIFRIC Updateの、「IAS第39号『金融商品:認識及び測定』-『著しい又は長期にわたる』の意味」の議題の暫定決定に関する箇所の仮訳です。IFRIC Updateの原文は、IASBウェブサイト
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/80AEE491-EA43-4F0B-938D-A725D5246461/0/IFRIC0905.pdfをご参照ください。

IAS第39号「金融商品:認識及び測定」-「著しい又は長期にわたる」の意味

IFRICは、IAS第39号に従って売却可能持分金融商品について減損を認識する際の、「著しい又は長期にわたる」(第61項に記述されている)の意味についてのガイダンスを示してほしいという要請を受けた。

IFRICは、この論点に関して実務に著しい多様性があるという意見書に同意した。IFRICは、この多様性の一部は、IAS第39号の規定がさまざまな方法で適用されていること(その一部は意見書で識別されている)の結果であるという結論を下した。IFRICは、その中でIAS第39号と不整合であるものに特に留意した。例えば、以下のような点である。

  • 価値の下落が著しく「かつ」長期にわたっていることを基準が要求しているものと読むことはできない。したがって、著しい下落又は長期にわたる下落のいずれでも、減損損失の認識を要求するのに十分である。IFRICは、IASBがIAS第39号の2003年改訂を確定する際に、字句を「かつ」から「又は」に意識的に変更したものであることに留意した。
  • IAS第39号の第67項は、減損の客観的証拠がある場合に、企業が売却可能持分金融商品について減損損失を認識することを要求している。IAS第39号の第61号は、「その取得原価を下回る持分金融商品に対する投資の公正価値の著しい又は長期にわたる下落も、減損の客観的証拠となる。(強調を追加)」と記述している。したがって、IFRICは、著しい又は長期にわたる下落は、客観的な証拠があるかどうかを判定する際の減損の可能性の単なる指標と考えることはできないという結論を下した。そのような下落が存在する場合には、減損損失の認識が要求される。
  • 投資の価値の下落が、関連する市場における全体的な下落の水準と一致しているという事実は、当該投資が減損していないと企業が判断できることを意味するものではない。それぞれの持分金融商品は特異性があるので、それぞれ個別に減損の有無を検討しなければならない。現時点で著しい又は長期にわたる下落があることは、予想されるタイミングがどうであれ、市場価値の回復が見込まれるという予想によって否定することはできない。したがって、IFRICは、予想される市場の回復は「長期にわたる」の評価とは関連性がないという結論を下した。
  • AG83項及びIAS第39号の適用ガイダンスの設例E4.9「非貨幣性の売却可能金融資産の減損」は、両方とも外貨建金融商品の認識を議論している。IFRICは、「著しい又は長期にわたる」は、当該金融商品を保有する企業の機能通貨で評価しなければならない(それがあらゆる減損損失の算定方法であるので)という結論を下した。
  • 何が著しい又は長期にわたる下落を構成するかについての判定は、会計方針の選択ではなく判断の適用を要する事実の問題である。IFRICは、たとえ企業がその判断を整合的に適用できるように社内的なガイダンスを作成しているとしても、このことに変わりはないことに留意した。企業はIAS第1号の第122項に従って、減損の客観的証拠の有無を判定する際に行った判断に関する開示を提供することとなることに、IFRICは留意した。

IFRICは、議論したIAS第39号との不整合はいくつかの例のみであり、実務に存在するかもしれないすべての不整合の網羅的なリストにはなりそうにないことに留意した。

IFRICは、実務に著しい多様性があることを認識したが、IASB がIAS第39号の置替えを開発するプロジェクトを加速化しており、新しい基準を早期に公表する見込みであることに留意した。このため、IFRICは本論点を議題に追加しないことを[決定した]。