IASB、金融負債の公正価値測定の「直感に反する」影響に対処
2010年5月11日
国際会計基準審議会(IASB)は、本日、金融負債の会計処理の変更案を、一般のコメントを募集するために公表した。本提案は、金融資産の分類及び測定についてのすでに完了した作業(IFRS第9号「金融商品」)に続くものである。
IASBは、負債の会計処理の限定的な変更を,公正価値オプションに対する変更とともに提案している。この提案は、IASBが行った広範な協議において多くの投資家等により示された懸念に対応したものであり、その懸念とは,企業が公正価値で測定することを選択した負債の信用リスクの変動によって生じる純損益のボラティリティは,直感に反し、投資家に有用な情報を提供しないというものである。
IASBがIFRS第9号を導入した際に、世界中の多くの関係者は、企業が公正価値で測定することを選択した金融負債の信用リスク(「自己の信用」)の変動の影響を除いては、金融負債についての現行の定めはうまく機能しているとの意見をIASBに述べた。
IFRS第9号に関するそうした世界的な協議に基づき、IASBは、「自己の信用」の論点についての投資家、作成者、監査法人、規制当局等の見解を求めた。受け取った見解は、これまでの協議と整合的なものであった。すなわち、「自己の信用」の変動による純損益のボラティリティは、デリバティブと売買目的保有の負債を除いては、投資家に有用な情報を提供しないというものである。
したがってIASBは、企業が公正価値で測定することを選択した金融負債に係る「自己の信用」の変動によるすべての利得及び損失を、「その他の包括利益」に振り替えることを提案している。「自己の信用」の変動は、報告される純損益に影響しない。
金融負債について他の変更は提案していない。したがって、この提案は、金融負債に公正価値オプションを適用することを選択している企業にのみ影響する。
重要なこととして、目的適合性がある場合に金融負債を区分処理することを望む者は、引き続きそうすることができる。それは、現行の金融負債に関する定めは、本提案の対象としている「自己の信用」の論点を除いては、うまく機能しているという一般的な見解と整合したものである。
本公開草案の紹介として、IASB議長David Tweedie卿は次のように述べた。
「金融資産と負債とを同じ方法で処理することへの理論的な支持論はあるが、信用力の悪化に苦しんでいる企業がそれに対応する多額の利益を計上できるという場合に,その会計処理が有用な情報を提供するものだと弁護するのは難しい。特に、投資家がそのような情報は自分たちの財務モデルから除外することが多いと我々に述べている場合にはそうである。」
本提案のハイレベルの要約であるIASB「スナップショット」も、IASBウェブサイト:http://go.iasb.org/financial+liabilitiesから無料でダウンロードできる。
公開草案「金融負債に対する公正価値オプション」は、2010年7月16日までコメントを募集している。公開草案は、本日からwww.iasb.orgの‘ Comment on a proposal’セクションを通じてアクセス可能である。
プレス関係の問い合わせ先
Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6472
Email: mbyatt@iasb.org
Sonja Horn, Communications Adviser, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6463
Email: shorn@iasb.org
専門的な内容に関する問い合わせ先
Liz Figgie, Technical Principal, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6425
Email: efiggie@iasb.org
Sue Lloyd, Associate Director, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6454
Email: slloyd@iasb.org
Gavin Francis, Director of Capital Markets, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6901
Email: gfrancis@iasb.org
国際会計基準審議会(IASB)について
国際会計基準審議会(IASB)は、2001年に設立され、独立した民間の非営利組織である国際会計基準委員会(IASC)財団の基準設定機関である。IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。 IASBは、10か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している15名の常勤のメンバーから構成されている。2012年までに16名のメンバーに拡大される。メンバーは、IASC財団の評議員会から選任されるとともに、これに対して説明責任を負っており、専門的な能力と、国際的なビジネス及び市場に関する経験の多様性に関して、選択し得る最良の組み合わせを選択することが要求されている。彼らの作業において、評議員会は、公的機関のモニタリング・ボードに対して説明責任を負っている。
公開草案「金融負債に関する公正価値オプション」の原文は、IASBのウェブサイトの中の金融商品(分類及び測定)プロジェクトのページから入手が可能です。
公開草案「金融負債に関する公正価値オプション」の日本語訳は以下よりダウンロードすることが可能です。本訳は、企業会計基準委員会スタッフによる参考のための資料です。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。
なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですのであらかじめご了承ください。