ASBJ 企業会計基準委員会

IASBが、投資者が企業に買収の説明責任を求める方法及びのれんの会計処理について公開協議

2020年3月19日

国際会計基準審議会(当審議会)は、企業が事業の取得に関して、当該取得がどのくらい成功したのかを投資者が評価するのに役立てるために報告する情報の考え得る改善に関するディスカッション・ペーパーを公表した。当審議会は、そうした取引から生じるのれんを企業がどのように会計処理すべきかに関してのフィードバックも求めている。

当審議会の現時点の考え方を説明した短編ビデオスナップショットをご覧いただきたい。

取得に関する開示の改善

他の事業を取得することは、企業が成長するための一般的な方法である。しかし、取得は必ずしも以後の各年度において経営者が当初に予想したような成果を上げるわけではない。投資者は、取得がそうした予想に対してどのくらいの成果を上げているのかについて、もっと知りたいと考えるであろう。特に、企業の経営者に取得の意思決定についての説明責任を求めることができるようにするためである。

このフィードバックに対応して、当審議会は、取得に関する目的に関する情報、及び以後の各期間においては、当該取得がそうした目的に対してどのように成果を上げているのかに関する情報の開示を企業に要求するIFRS基準の変更を提案しようとしている。

のれんの会計処理

当審議会は、企業がのれんを会計処理する方法を変更すべきかどうかについても検討した。企業はのれんの減損テストを毎年行わなければならないが、このテストが有効かどうかに関して利害関係者の意見は分かれている。一方には、減損テストは投資者に取得の業績に関する情報を与えているという意見がある。他方、このテストは高コストで複雑であり、のれんの減損損失が報告されるのが遅すぎることが多いという意見もある。

当審議会は、より良い減損テストを識別しようと試みた。すなわち、のれんが価値を失った場合により早期に報告することを企業に要求するような減損テストである。現行のテストは、投資者に情報を提供してはいるが、のれんだけでなくより幅広い資産のセットをテストしている。当審議会は、より適切に合理的なコストでのれんに的を絞ることのできる代替案はないと結論を下した。当審議会は、新たな開示要求が、取得の業績について必要とされる情報を投資者に提供するであろうと期待している。

一部の利害関係者は、当審議会は償却を再導入すべきであると提案した。すなわち、のれんを一定期間にわたり徐々に評価減していくことであり、2004年までのIFRS基準における要求であった。しかし、償却の長所と短所を検討した上で、当審議会の予備的見解は、減損のみのアプローチを維持すべきであるというものである。のれんを償却することが企業が投資者に報告する情報を著しく改善するという明確な証拠がないからである。

ハンス・フーガーホースト国際会計基準審議会議長は、次のようにのべた。

「投資者は、企業の経営者に説明責任を求めるのに役立てるため、取得がどのように成果を上げているのかに関するより良い情報を望んでいる。我々の提案している解決策は、企業に過大なコストを生じさせずに投資者のニーズを満たすことを狙いとしている。

我々は、のれんを取得後の各年度においてどのように会計処理すべきかという扱いにくい論点を検討した。当審議会の現時点での見解は、減損のみのアプローチを維持すべきであり償却を再導入すべきではないというものであるが、この重要な議論に情報を与える新たな証拠があれば歓迎する。」

当審議会のディスカッション・ペーパー「企業結合―開示、のれん及び減損」は、上記のほかにも追加的な提案を含んでおり、作成者にとっての減損テストのコストを低減する提案が含まれている。

ディスカッション・ペーパーを読んでコメントするには、コメントレターのページをご覧いただきたい。ディスカッション・ペーパーは、当審議会の予備的見解及びその理由のエグゼクティブ・サマリーを含んでいる。利害関係者がディスカッション・ペーパーの内容を素早く理解するのに役立てるためである。

当審議会は202012月31日まで利害関係者のコメントを求めている。


ディスカッション・ペーパー「企業結合 開示、のれん及び減損」 の日本語訳は以下からダウンロード可能です。この翻訳は、企業会計基準委員会スタッフが参考のために作成したものです。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。

なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですので、あらかじめご了承ください。

ディスカッション・ペーパー「企業結合ー開示、のれん及び減損」