ASBJ 企業会計基準委員会

IFRS財団が、国際サステナビリティ基準審議会、CDSB及びVRFとの統合、並びに開示要求のプロトタイプの公表を発表

2021年11月3日

世界の首脳がグラスゴーでCOP26(気候変動という重大かつ緊急の問題に対処するための国連のグローバル・サミット)のために会合している中で、IFRS財団評議員会(評議員会)は、グローバル金融市場に気候及び他のサステナビリティ問題についての高品質の開示を提供するための3つの大きな進展を発表する。

  • 新しい国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立。公共の利益のために、投資者の情報ニーズを満たす高品質なサステナビリティ開示基準の包括的なグローバル・ベースラインを開発するための機関である。
  • 投資者に焦点を当てた主導的なサステナビリティ開示機関が、この新しい審議会に統合するという約束。IFRS財団は、気候変動開示基準委員会(CDSB―CDPの取組み)及び価値報告財団(VRF―統合報告フレームワークとSASB基準を提供)の統合を2022年6月までに完了する。
  • IFRS財団評議員会がISSBのための準備作業を行うために設置したグループである技術的準備ワーキング・グループ(TRWG)が開発した気候のプロトタイプ及び全般的な開示要求のプロトタイプを公表。これらのプロトタイプは、各機関からの代表者の6か月の共同作業の成果であり、参加した機関は、CDSB、国際会計基準審議会(IASB)、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)、VRF及び世界経済フォーラム(フォーラム)で、証券監督者国際機構(IOSCO)及びその証券監督者技術専門家グループの支援を受けている。TRWGは、これらの機関のコンテンツの主要な要素を、ISSBが検討するために改良され統一された提言のセットに統合した。

これらの進展は、財団の改訂後の定款に規定された必要な組織体制を整えるものであり、金融市場におけるグローバルなサステナビリティ開示基準の設定主体のために技術的な基盤を構築するものである。これらは、企業のサステナビリティに関する情報開示を合理化し、正式なものにすることを求める、増大する緊急の要望に応えるものである。

ISSBは、IASBの横に並び緊密に協力して業務を行い、IFRS会計基準とISSBの基準であるIFRSサステナビリティ開示基準との間のコネクティビティと互換性を確保する。公益の正当性を確保するため、両審議会は評議員会によって監督され、評議員会は、各法域での企業報告に責任を負う資本市場当局のモニタリング・ボードに対して説明責任を負う。ISSBとIASBとは独立しており、それぞれが作成する基準は、投資者及び他の資本提供者に包括的な情報を提供するため互いに補完する。

証明されている要望

金融市場は、個々の企業が直面する環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題から生じるリスク及び機会を評価する必要がある。これらは企業価値に影響を与えるからである。このことが、高品質な情報に対する多くの要望を生じさせている。投資者及び他の資本提供者は、情報ニーズを満たすグローバルなサステナビリティ開示基準を望んでいる。自発的な報告のフレームワーク及びガイダンスは革新と行動を促してきたが、それらが断片的であるため、投資者、企業及び規制当局のコストと複雑さを増大させている。

多くの投資者及び規制当局が、IFRS財団に対し、市場主導の取組みを基礎とし、140以上の法域で使用されている会計基準の策定における経験を活用して、サステナビリティ事項についてのグローバルで比較可能な報告を金融市場にもたらすことを要望してきた。

ISSBを設立するという評議員会の決定は、2回の公開協議で受けたフィードバック、諮問グループとの討議、IFRS財団モニタリング・ボードとの頻繁な対話、及びIOSCO等からの支援に基づいている。

包括的なグローバル・ベースライン

ISSBは、IFRSサステナビリティ開示基準を開発する。これには、企業価値の評価及び投資の意思決定に関連性のあるサステナビリティ事項に企業が与える影響を扱う開示要求が含まれる。ISSBの基準は、企業が包括的なサステナビリティ情報をグローバル金融市場に提供することを可能にする。当該基準は、法域固有の又はより幅広い利害関係者のグループに向けた要求事項(例えば、欧州連合が計画している企業サステナビリティ報告指令やアメリカ大陸及びアジア・オセアニアでの取組み)との互換性を図るために開発される。

G20首脳と金融安定理事会は、ともにサステナビリティ開示のためのグローバル・ベースラインとなる基準を開発するためのIFRS財団の作業プログラムを歓迎した。

既存の取組みを統合し基礎とすること

ISSBは、公開協議を通じて受けたフィードバックに基づき、金融市場におけるサステナビリティ開示のためのグローバルな基準設定主体になるため、投資者に焦点を当てた既存の報告の取組みによる作業を基礎にしていく。この目標を達成するため、IFRS財団は、CDSB(その事務局はCDPが務めている)及びVRFとの間で、それらの技術的な専門知識、コンテンツ、スタッフ及び他のリソースをIFRS財団と統合することを約束した。これは、CDSB及びVRFの技術的な基準及びフレームワークが、TCFD及び世界経済フォーラムの指標とともに、新しい審議会に技術的作業の基礎を提供することを意図したものである。

ISSBに業務を開始するための堅牢な基礎を提供することの緊急性及び要望を踏まえ、評議員会は、ISSBに提言を提供するためのTRWG(CDSB、TCFD、IASB、VRF及びフォーラムの代表者で構成されている)を設置した。TRWGは、本日公表した2つのプロトタイプの文書に関する作業を完了した。1つは、TCFDの提言を基礎とした気候関連開示に焦点を当て、業種固有の開示を含むものであり、第2の文書は、全般的なサステナビリティ開示を定めたものである。ISSBはこれらのプロトタイプを当初の作業プログラムの一部として検討する。

専門家の助言から情報を得る

ISSBは、いくつかの諮問グループからの専門知識を活用する。サステナビリティ事項についてのISSBへの技術的助言は、新しいサステナビリティ諮問委員会から提供される予定である。そのメンバーは、国際通貨基金、経済協力開発機構、国連、世界銀行に加えて、公的機関、民間企業及び非政府組織からの専門家となる予定である。

IFRS諮問会議の任務及び専門性は、評議員会及びIASBのほか、ISSBに対しても戦略的なサステナビリティ関連の助言及び相談を提供するように拡大される予定である。そして、評議員会は、ISSBと新興経済圏を含む各法域の代表との間で基準設定に関する公式の対話の仕組みを構築するためのワーキング・グループを設置した(この役割をIASBのために果たしている、会計基準アドバイザリー・フォーラムと同様のものである)。

当財団は、既存のCDSB及びVRFの諮問グループを活用するつもりである。これにはサステナビリティ開示の改善を長年支持してきた投資者及び他の専門家が含まれる。また、フォーラムの民間企業連合も活用する予定である。当財団はまた、国際統合報告評議会を利用して、IASBとISSBの作業のコネクティビティを、統合報告の基本的な概念及び指導的原則を通じて確立するための助言を受ける予定である。

グローバルなフットプリント

ISSBは、グローバルかつ複数の拠点に所在することになり、すべての地域(アメリカ大陸、アジア・オセアニア及びEMEA(欧州、中東及びアフリカ))がカバーされる予定である。開発途上経済圏及び新興経済圏との対話が重要な優先事項となる。

フランクフルト(審議会と議長のオフィスの所在地)とモントリオールの事務所が、新しい審議会を支える主要な機能及び各地域の利害関係者との協力関係を深める役割を担う。サンフランシスコ(VRFとの統合後)及びロンドンの事務所も、市場との対話及び各地域の利害関係者とのより深い協力関係のための技術的な支援及びプラットフォームを提供する。

寄せられた関心の表明に基づいて、IFRS財団は遅滞なくフランクフルト及びモントリオールと接触して、ISSBが2022年初頭に業務を開始できるようにするための必要な取決めを行う。アジア・オセアニア地域における新しい審議会のフットプリントを最終確定するために、北京と東京からの事務所設置の提案についてさらに議論を続ける。IOSCO及び他の重要な利害関係者から表明された緊急性を尊重するため、適時の行動が必要とされる。

今後のステップ

評議員会は、ISSBの議長及び副議長の選任において進展した段階にある。評議員会は、追加の審議会メンバー(定員14名まで)の募集も近いうちに開始する。

ISSBの業務は、議長及び副議長が選任されると同時に開始する予定であり、ISSBの作業計画及びTRWGからの提言に基づく提案を伝えるための公開協議から始める予定である。これらの公開協議の後に、ISSBの作業はIFRS財団の厳格なデュー・プロセスを経ることになる。これには、基準として最終確定する前に、公開協議に対して寄せられたフィードバック及び提案の考え得る改善についてISSBが公開で議論することも含まれる。このプロセス全体は、評議員会のデュー・プロセス監督委員会が監督する。

IFRS財団評議員会のエルッキ・リーカネン議長は次のように述べた。

「サステナビリティ、特に気候変動は、我々の時代を決定づける問題である。関連する機会及びリスクを適切に評価するために、投資者は財務諸表と互換性のある高品質で透明性のあるグローバルに比較可能なサステナビリティ情報の開示を必要としている。ISSBを設立し、CDSB、価値報告財団等の革新性と専門知識を基礎にすることは、この目標を達成するための基盤を提供することになる。」

メアリー・シャピロTCFD事務局長は次のように述べた。

「ISSBのグローバル・ベースラインの開発は、金融市場におけるサステナビリティ情報開示に変革をもたらすであろう。TCFDはISSBの設立を歓迎する。ISSBは、国際的に認められているTCFDのフレームワーク及びサステナビリティ基準設定主体の同盟の作業を基礎にする。ISSBは、一貫した比較可能でグローバルな報告基準を確立するための大きな一歩である。」

価値報告財団の共同議長であるリチャード・セクストンとロバート・K・スティールは、次のようにコメントした。

「本日の発表は、我々が生きている変化する世界を反映したものである。サステナビリティと長期的な思考が、ますますビジネスと投資者の意思決定の中心になってきている世界である。これは、IIRCとSASBが主導した変革であり、現在では世界中の企業及び投資者が利用している統合思考の諸原則、統合報告フレームワーク及びSASB基準を開発するために、自主的に時間を割きリソースを提供した何千もの利害関係者によって可能となったものである。価値報告財団は、本日発表された統合が、国際的なサステナビリティ・パフォーマンスを推進するための効果的な情報開示を提供するのに役立つと確信している。我々がこの刺激的な次のステップを刻むにあたり、引き続き皆様のご協力をお願いする。」

CDSBのリチャード・サマンズ議長とCDPのポール・シンプソンCEOは次のように述べた。

「CDPは20年前に環境開示のパイオニアとなり、CDSBを2007年の創設以来主催してきた。国際的な会計コミュニティに支援された、産業界及び環境団体とCDSBの国際的なパートナーシップは、重要性がある気候、環境及び社会の情報を、投資者及び規制当局へ報告するための一般的に認められるフレームワークを構築することを目的として設立された。

IFRS財団がISSBを設立し、サステナビリティ関連財務情報開示のためのグローバルな基準の開発を進めようとしていることを嬉しく思う。ISSBがCDSBと統合することで、新しい審議会が強固な基盤を持ち、既存の最善の実務を基礎として迅速に活動することを確かなものにすることになる。CDPは、ISSBのプロセスを、グローバル市場を主導する環境情報開示のメカニズムとデータに関する専門知識により支援することを楽しみにしている。」

世界経済フォーラムの創設者でありエグゼクティブ・チェアマンであるクラウス・シュワブは、次のように述べた。

「長期的な価値を創出するには、財務とサステナビリティの両方のパフォーマンスに焦点を当てる必要がある。これは、財務と同様にサステナビリティのパフォーマンスを測定するためのツールを我々が必要としていることを意味する。世界経済フォーラムとその民間セクター連合は、この前線における貢献を行い、指標「Stakeholder Capitalism Metrics」のコア・セットを提案している。この取組みがISSBの技術的作業の基礎になることを嬉しく思う。ISSBが設立され、その歴史的使命を果たすまで、ISSBの支援におけるIFRS財団とのパートナーシップを継続することを楽しみにしている。」

IFRS財団はまた、ライブ放送を11月3日の14:30(英国標準時)に行い、ISSBに関する詳細な情報を提供する。このイベントのライブストリーミングが、当財団のサイト並びにIFRS財団のLinkedIn及びYouTubeチャンネルを通じて行われる。

エルッキ・リーカネンが上記の発表を紹介する短編ビデオはこちら。COP26でのスピーチ原稿はこちら

ISSBの設立を促進するための定款修正案に関する評議員会の公開協議に寄せられた利害関係者のフィードバックを要約したフィードバック・ステートメントはこちら

 

以 上