第18回会議

国際会計基準審議会(IASB)の第18回基準諮問会議(SAC)が、2007年2月26日と27日の両日にわたり、ロンドンで開催された。日本からは、SACメンバーである八木良樹株式会社日立製作所取締役会議長・監査委員長、辻山栄子早稲田大学商学部教授、オブザーバーとして金融庁より丸山純一審議官が出席し、金融庁より原寛之課長補佐、企業会計基準委員会(ASBJ)より堀本敏博専門研究員が同席した。以下、会議の概要を報告する。

Ⅰ.IASBの作業計画

Tweedie IASB議長及びIASBディレクターから、IASBの戦略的目標、作業計画等について説明が行われた。

  • IASBでは現在、1.中小企業向け会計基準の完成、2.より多くの国が各国の会計基準から国際会計基準(IFRSs)へ切り替えることの奨励、3.IFRSsと米国会計基準とのコンバージェンス、の3点を主要な戦略的目標としている。
  • 1.について、IASBは2007年2月中旬に公開草案を公表した。この提案された中小企業向け会計基準は、IFRSsのすべての項目を取り扱っている。
  • 2.について、各国のコンバージェンスの取組みは、以下のとおりである。
    《インド》
    IASBの代表が最近インドを訪問し、コンバージェンス計画の議論を開始した。インドの勅許 会計士協会は、IFRSsの適用に向けての取組みを開始し、特別委員会を設立した。インドは、外国からの投資を必要としているので、規制当局者、特にインド財務省は、コンバージェンスに関心があり、協力的である。
    《韓国》
    2007年3月に、韓国政府と韓国会計基準委員会(KASB)は、IFRSs採用のロードマップを発表予定である。
    《日本》
    2007年3月末に、ASBJとIASBの代表者は、日本の会計基準とIFRSsのコンバージェンス達成の目標に向けた第5回共同会議を開催する予定である。
    《中国》
    SACメンバーであり、中国会計基準委員会事務局長かつ中国財政部副大臣であるWang Jun氏が、中国のコンバージェンス計画等について説明した。中国では、国際会計基準の適用を今年度から実施しているが、移行はスムーズに行われている。また、中国財政部はIFRSsの採用を促進し、職業会計人のトレーニング・プログラムを支援している。IASBが、コンバージェンスの作業メカニズムを確立し、国際会計基準を先進国のみならず新興経済圏での利用を促進し、原則ベースの会計基準開発を進めるという役割を賞賛する。
  • 3.について、米国証券取引委員会(SEC)からのオブザーバーであるJulie Erhardt氏が、IFRSsと米国会計基準のコンバージェンスについて最新の状況を説明した。3月上旬に米国SECがスポンサーとなる円卓会議を開催し、米国の資本市場に上場している外国企業が、2つの会計基準間の差異調整表を廃止した場合の影響について検討する予定である。この円卓会議は、米国において2つの会計基準を認めることの問題点を理解し、米国上場企業の財務報告に与える影響を検討する非常に良い機会である。

SACメンバーからのコメント

  • ASBJは、2006年10月に日本基準とIFRSsとのコンバージェンスに向けた、「ASBJプロジェクト計画」を公表した。現在、IFRSsとのコンバージェンスを進めるために、20を超えるプロジェクトに精力的に取り組んでいるところであり、今後も努力を続ける予定である。また、2007年1月に国際会計基準委員会財団(IASC財団)の評議会が東京で会議を開催したが、出席したIASC財団の評議員のほぼ全員が、業績報告書において、現行の純利益を報告することを支持しているということを聞き、非常に心強く感じている。(辻山SAC委員)
  • 日本では、現在会計基準とその適正な執行に対する関心が非常に高まっている。加えて、企業は「2008年問題」に直面している。その内容は、会計基準の改訂、J-SOX法と呼ばれる内部統制システムに関するルールの施行開始、四半期開示などディスクロージャーに関するルールへの対応等が、2008年に一度に必要とされることである。会計基準の改訂は、当然、IFRSsと整合の取れた内容で、その項目は10件を超える。このように、我々はワールドワイドに理解を得られる体制作りを着実に進めている。我々は、納得できる基準ができれば、迅速かつ積極的に採用することを今後も約束できる。(八木SAC委員)
  • 概念フレームワークの議論において、財務諸表は誰のために作成するのか再検討すべきではないか。財務諸表においてより透明であるのは良いことであるが、全ての利害関係者の要求を財務諸表に記載できないであろう。SACはこのような基本的なトピックを議論すべき場なのではないか。(独財務諸表作成者)
  • 国際会計基準(IAS)第37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」における負債の問題については今後どのように取り扱うのか。米国の基準とは異なる方向を目指すのか。(イスラエル会計士)
    → IAS第37号の見直しは米国財務会計基準(SFAS)第5号「偶発事象の会計処理」と統合することを目的としていない。SFAS第5号では、そもそも現行のIAS第37号で認識している複数の項目の認識を禁止しており、IAS第37号はどちらかというとFASBの概念基準第7号に類似している。(IASBディレクター)
  • 欧州では多くの企業が各国の会計基準よりIFRSsに変更したことから、新たに公表された基準は2009年まで効力を持たないことになっている。しかし、IAS第8号「会計方針、会計の見積りの変更及び誤謬」によると、会計方針の変更により遡及修正が必要になるが、救済措置はないのか。(伊会計士)
    → 各企業では、経営陣への報告用に同様の修正を行っているのではないか。それに加えて、デュー・プロセスの観点からも認められないのではないか。(IASBディレクター)
  • 排出権取引に関して、インドや中国で作られた多くのファンドで成長しているが、様々な会計処理が行われている。この取引が拡大していくと、実務においてダイバージェンスに繋がる懸念があるので、排出権取引に関するガイドラインの開発をお願いしたい。(世界銀行代表)
  • FASBのアジェンダである「財務諸表の表示」プロジェクトのフェーズBのディスカッション・ペーパーはアジェンダ・ペーパー2Bと2Cで公表時期が異なるが、いつ公表することを予定しているか。(八木SAC委員)
    → 財務報告プロジェクトのフェーズBのディスカッション・ペーパーは、当初計画より遅れて2007年の後半に公表されるであろう。(IASBディレクター)

Ⅱ.XBRL(eXtensible Business Reporting Language):
IASC財団の計画及び財務報告への影響

IASC財団ディレクター及びスタッフから、XBRL(拡張可能な財務報告言語)の世界各国での採用状況、IASC財団におけるXBRLへの取組み状況及び取組み計画、今後のXBRLの財務報告への影響等につき、プレゼンテーションが行われた。主な内容は以下のとおりである。

  • XBRLは、財務諸表において報告する各項目を分解して利用可能とするITツールである。XBRLは、規制当局、政府系機関、情報仲介業者、ソフトウェア開発会社等450以上の組織から構成される非営利国際コンソーシアムが管理している。
  • XBRLは、IFRSsデータの比較可能性を強化し、そのデータの利用を推奨する会計基準とシェアする共通電子データであるため、IASC財団の目的を補完している。
  • コントロールと質を維持し、IFRSタクソノミーから乖離する開発を避け、規制当局の要求に取り組むために、IASC財団は、IFRS XBRLタクソノミーの開発において所有権を保持し、主要な責任を果たすべきである。
  • IASC財団は、これら質を確保するためにプロフェッショナルなXBRLスタッフとボランティアによる適切な協力機構を構築した。
  • 評議会は、知的所有権の問題、資源、プロセス、ストラクチャー、タクソノミーの内容の範囲、及びUS/IFRSのタクソノミーの内容と枠組みのコンバージェンスに関して、戦略的決定を行うであろう。

SACメンバーからのコメント

  • オーストラリアではXBRLに対する規制当局のニーズが強いが、アナリストの立場でグローバルな観点から見た場合、どの程度需要があるのか。(豪金融機関)
    → XBRLの利便性を考慮すると、アナリストとしてはXBRLが国際的に普及することを非常に期待しているのは間違いないであろう。(米国投資銀行)
  • XBRLは、財務諸表表示プロジェクト以上に財務報告の方法を変更することになるであろう。(独会計士)
  • XBRLの潜在的ユーザーが、XBRLを急速に採用することを期待するが、定義された用語の分類や説明に関連して、ある一定の質の維持を確保できるようIASC財団が関与していくことを期待したい。(IMF代表)
  • 競合するタクソノミーが出現しないように、IASC財団がXBRLの開発にリーダーシップを維持することが重要である。(イスラエル会計士)
  • 日本では、2008年からすべての公開企業は財務諸表を金融庁にXBRL形式で提出することになる計画であり、日本はXBRLへの取組みにおいて恐らく世界の先駆けとなるであろう。(金融庁丸山審議官)

Ⅲ.概念フレームワーク

カナダ会計基準委員会(AcSB)のIan Hague氏が、概念フレームワーク・プロジェクトにおける8つのフェーズのうち、現在活動中である4つのフェーズの進捗状況につき説明を行った後、フェーズB「構成要素及び認識」における資産の定義に関し、現在の定義とは異なる定義の提案を行い、その後質疑応答が行われた。

(1) 概念フレームワークのプロジェクトの概要

プロジェクトは、2005年1月から8つのフェーズに分けて行われるが、その完了までには5年以上の年月が必要と見込まれているため、それぞれのフェーズごとにディスカッション・ペーパー及び公開草案を公表することとしている。

  • 本件プロジェクトは、改善された共通の概念フレームワークを開発するためのIASBとFASBの共同プロジェクトである。このフレームワークは、将来の会計基準開発に向けて、確固たる基礎を提供するとともに、原則ベースで内的に整合し、国際的に収斂し、投資家・債権者等の意思決定に必要な情報を提供する財務報告を導く基準を開発するという両審議会の目標遂行に不可欠なものとなる。
  • 各フェーズの現在の進捗状況は以下のとおりである。
フェーズ トピック 進捗状況 次の文書
A 目的及び質的特性 2007年2月にDPのコメント分析を両審議会に提出 DPを2006年7月6日に公表
ED2007年3Q
(予定)
B 構成要素及び認識 審議会での審議 DP2007年4Q (予定)
C 測定 計画及びスタッフリサーチ 円卓会議
2007年1Q
D 報告企業 審議会での審議 DP 2007年2Q
(予定)
E 表示及び開示、財務報告の境界を含む 他者のリサーチ中 未定
F フレームワークの目的及びGAAPヒエラルキーでの地位 計画及びスタッフリサーチ 未定
G 非営利部門への適用 未定
H フレームワーク全体 未定
  • フェーズA「目的及び質的特性」では、財務報告の目的の検討と、目的適合性、表現の忠実性、比較可能性(首尾一貫性を含む)、理解可能性を含む財務報告情報の質的特性の検討、さらに質的特性間のトレード・オフ及びそれらが重要性と費用対効果の概念といかに関係するかを含む財務報告情報の質的特性の検討を行っている。
  • 2006年7月に、両審議会は一般からのコメントを求めるためにIASBディスカッション・ペーパーとFASB予備的見解「財務報告に関する概念フレームワークについて:財務報告の目的及び意思決定に有用な財務報告情報の質的特性」を公表した。
  • これに対して、関係者からは次の2つの事項、すなわち受託責任(stewardship)と表現の忠実性(faithful representation)について懸念の表明があった。受託責任は投資家や債権者が投資や与信のための意思決定を行うために有用な情報を提供するという財務報告の目的に含まれるとするディスカッション・ペーパーの見解に反対が多かった。また、従来用いられている信頼性(reliability)という用語は、あまりに多様に解釈されているため、これに代えて表現の忠実性という用語を用いることとした点について、表現の忠実性は信頼性より狭い概念であり十分ではなく、混乱を招くことになるとのコメントが寄せられた。
  • フェーズB「構成要素及び認識」では、両審議会は、資産の定義案を策定したが、専門家のみならず、SAC/米国財務会計基準諮問委員会(FASAC)と協議するとともに、負債の定義については、両審議会は、資産の定義とパラレルである負債の定義の作業草案策定を継続中である。
  • また、両審議会は、IASBの概念フレームワーク、及びFASBの概念書における現在の負債と資本の定義を再考する代替アプローチの調査をスタッフに要請した。その代替アプローチは、請求権(claims)のような1つの構成要素アプローチの開発に焦点を当てるとともに、そのアプローチを採用することの影響が何であるかに焦点を当てる。
  • フェーズC「測定」において、両審議会は、2007年1月と2月に香港、ロンドン、ノーウォークで円卓会議を開催し、関係者のさまざまな意見を聴取した。
  • フェーズD「報告企業」は、審議会の審議は継続中であり、報告企業とグループ企業の境界(boundaries)に関するディスカッション・ペーパーの公表が2007年第2四半期に予定されている。

(2) 資産の定義

現行の資産の定義(IASBフレームワーク第49項)

資産とは、過去の事象の結果として当該企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源をいう。(An asset is a resource controlled by the entity as a result of past events and from which future economic benefits are expected to flow to the entity.)

提案中の資産の定義

資産は、企業が現在の権利又は他の特権的アクセスを有している現在の経済的資源である。(An asset is a present economic resource to which the entity has a present right or other privileged access)

  • 「現在の」は、経済的資源及び権利又は特権的アクセスの双方が、貸借対照表日に存在していることを意味する。
  • 「経済的資源」は、プラスの経済価値を持つものである。それは、希少なものであり、生産や交換といった経済活動を遂行するために使用されることが可能である。経済的資源は、直接的に又は間接的に、単独又は他の経済的資源とともに、キャッシュ・インフローの生成又はキャッシュ・アウトフローの減少に貢献することができる。経済的資源には、キャッシュの支払い、財貨の引渡し又はサービスの提供の約束といった、他者が企業に対して行う無条件の契約上の約束が含まれる。サービスの提供には、実行を待機すること(standing ready)、又は企業がそうでなければ着手する活動に従事することを禁止することが含まれる。
  • 「権利又は他の特権的アクセス」とは、企業が、現在の経済的資源を直接又は間接的に利用できるようにし、かつ、他者による利用を排除又は制限できるようにする。「権利」は、法的に強制できる(enforceable)、又はそれと同等の手段によって強制できるものである。他の特権的アクセスは、強制できるものではないが、機密又は他のアクセスに対する障壁等によって保護されているものである。
  • 資産の定義の改訂案は、概念フレームワークのプロジェクトの根幹をなすものであり、オックスフォード英語辞典の資産の定義である、「良いもの(a good thing)」かつ「所有しているもの(I have it)」と比較し、この要件を満たすものである。

SACメンバーからのコメント

  • 受託責任が何を意味するかについて、さまざまな考えがあるように思われる。また、受託責任では特に企業統治モデルにおける相違を考慮すべきかどうかを検討すべきである。(イスラム金融サービス審議会代表)
  • 「測定」に関する円卓会議の説明を求める声が多いが、円卓会議の議事録はIASBのホームページに掲載されないのか。(インド財務諸表作成者)
    → 円卓会議の議事録はホームページには掲載されないが、意見の概要はホームページに掲載されるIASBの3月ボード会議のアジェンダ・ペーパーで分かるであろう。(IASBディレクター)
  • ロンドンの円卓会議に出席したが、参加者からは様々な意見が述べられた。参加者の多くは取得原価や公正価値のみに基づかない混合属性モデル(mixed attribute model)を支持していた。(独会計士)
  • 「測定」に関するノーウォークの円卓会議では、一部の人を除いて、資産と負債のすべてを時価で統一的に評価したり、原価で統一的に評価したりすることを支持している人はほとんどいなかった。私を含め多くの人は、測定問題に対するIASBのアプローチは、資産と負債の測定問題だけに問題を限定してしまっていて、「利益(income)の測定」という視点が欠如しているということを指摘していた。(辻山SAC委員)
  • 資産・負債の定義は、財務諸表で何が認識されるかを助けるものであると考えるが、提案された資産の定義は、認識とは無関係で孤立してしまっている。認識の考えが欠落した資産の定義は、定義として好ましくないと考える。(英会計士)
  • 英会計士の意見(上記)を全面的に支持する。概念フレームワークにおける資産の定義においては、この世に存在するすべての資産の定義ではなく、会計上の認識の対象とすべき資産の定義が求められている。もし資産の存在という視点から資産の定義にアプローチすると、例えば企業の自己創設のれんも資産の定義に当てはまることになる。定義だけに限れば、自己創設のれんを含めることに必ずしも反対していない人がいるかもしれない。しかし、それを認識すること、つまり自己創設のれんをオンバランスしてもよいとまで考えている人は少ないはずである。では、定義に含まれているものを、どのような理由でオンバランスしないことになるのだろうか。測定の信頼性の問題だろうか。そうすると、もし信頼性をもって測定できるとしたら、オンバランスしてもいいということになるが、果たしてそうだろうか。そうではないはずだ。自己創設のれんは、例え信頼性をもって測定できたとしても認識しないというのが、我々の共通理解だ。企業の自己創設のれんは、投資家が自らリスクを負って、会計情報をインプット・データとして用いた結果として推定されるべきものだから、それ自体が会計情報の中に入ってくると、循環論になってしまう。だからこそ、自己創設のれんは、オンバランスされないのである。会計情報として何を(What)、いつ(When)、どのように(How)含めるのかを規定するのが定義、認識、測定に関する概念フレームワークの役割である。もしIASBが、定義からは自己創設のれんを排除する必要がないというなら、自己創設のれんに限っても、認識・測定に関する定義の帰結をあらかじめ明らかにしておく必要があると思う。(辻山SAC委員)

Ⅳ.IASC財団の教育への取組み及び広報戦略について 

IASC財団のプロジェクト・マネジャーから、財団の教育への取組みの近況報告、及び5か年計画について説明が行われた。また、IASBの新広報部長(Director of Corporate Communication)から2007年の広報計画についてプレゼンテーションが行われた。 

IASC財団プロジェクト・マネジャーからの説明

  • 財団の教育への取組みの目的は、1) IFRSsを世界的規模で導入し、首尾一貫した適用を促進するための努力を強化すること、2) 教育への取組み活動に資金提供するための利益を創出することである。
  • 財団の教育スタッフは、現在IFRSsの教材の開発、IFRSsに係る外部との会議、プレゼンテーション、他の作業のサポートに全力を注いでいる。
  • IASC財団の定款が改訂された結果、中小企業(SME)や新興経済圏の特殊なニーズを勘案するために、教育への取組みに新たな委託業務が追加された。
  • これを受けて、完全版(Full)IFRSs、及び中小企業や新興経済圏向け会計基準に関し、2011年までの詳細な5か年計画を策定した。
  • IFRSsの教材へのアクセスは、ハードコピーのみならず電子フォーマットがホームページを通して、多くの言語で利用できるようになった。
  • 教育はIASC財団が取り組む事項であり、教材についてはIASBによる承認は受けていない。

IASC財団の広報部長からの説明

  • 2007年のIASB広報計画として、効果的な広報プログラムの提供により、利害関係者の関与を強化したい。
  • そのために、我々がどう評価されているかを調査するとともに、ブランドをアップデートし、明確かつ首尾一貫したメッセージを発信することが重要と考えている。
  • 国際会計士連盟(IFAC)を含む他の基準設定主体との協業も行っていきたい。

 Ⅴ.中小企業向け会計基準

  • IASB戦略目標の1つとなっている中小企業向け会計基準につき、IASBディレクターが2007年2月に公表された公開草案の概略について説明を行った上で、事前に提示した質問事項を基に、SACメンバーを3つのグループに分け議論を行い、各グループの代表者から、各グループでの議論内容について発表があった。主な内容は以下のとおりである。
  • 中小企業向け会計基準、適用ガイダンス、結論の根拠の3部から構成される公開草案が、2007年2月15日にIASBから公表された。コメントの回答期限は、2007年10月1日である。
  • 中小企業向け会計基準は、完全版IFRSsから、会計処理の選択肢を取り除き、一般的には中小企業に関連しないトピックを削除し、認識及び測定の方法を単純なものにすることで、本公開草案では、完全版IFRSsと比較して、中小企業に適用する会計基準及び適用ガイダンスの量は、85%以上減少している。その結果、本公開草案は、実行可能で、自己完結する会計基準のセットを提供することになり、投資家は初めて、全世界の中小企業の業績について、同じ基準で比較することができるようになる。
  • 中小企業が、本公開草案を基に財務諸表を作成することを支援するように、IFRSsの規定では、可能であれば単純化し、簡単な英語を用いて記述し直している。しかし、完全版IFRSsも中小企業向け会計基準も、同じ基本原則を基にしており、中小企業は、完全版IFRSsへの移行が容易にできるようになっている。
  • 中小企業向け会計基準を適用するか否かは、それぞれの国又は適用する地域が決定する事項である。例えば、EUでは、上場企業はIFRSsを遵守しなければならないが、中小企業については、どの基準を遵守しなければならないかは、加盟国の判断に委ねられている。ただし、小規模であっても上場企業であれば、中小企業向け会計基準利用の適格要件を満たさないことをIASBは提案している。
  • 本公開草案に反映されている完全版IFRSsからの変更点は、中小企業の財務諸表利用者のニーズ及び費用対効果の観点から、完全版IFRSsに盛り込まれている原則に関し、以下3種類である。

1.省略された項目

典型的な中小企業に関連しないIFRSsの項目については省略されており、必要に応じて、該当するIFRSsを参照するようになっている。省略されたトピックは以下のとおりである。

  • 超インフレ経済環境での一般的物価水準への調整を行った上での報告
  • 持分決済型株式報酬(計算の詳細はIFRS第2号「株式報酬」に規定)
  • 農業資産の公正価値の決定(IAS第41号「農業」を参照することになるが、IASBは、農業に従事する中小企業に関しては公正価値の使用を減らすことを提案)
  • 鉱業(IFRS第6号「鉱物資源の調査及び評価」を参照)
  • 中間財務報告(IAS第34号「中間財務報告」を参照)
  • ファイナンス・リースの貸手側の会計処理(ファイナンス・リースの貸手は、中小企業向け会計基準の使用が適格とならない金融機関である可能性が高い)
  • のれんの回収可能額(中小企業は、IAS第38号「無形資産」に定められているよりも低い頻度でのれんの減損についての判定を行うことになるであろうが、当該判定を行う必要がある場合にはIAS第38号の計算に関するガイダンスを参照することになる)
  • 1株当たり利益及びセグメント報告。両方とも中小企業に対しては要求されない。
  • 保険契約(保険会社は中小企業向け会計基準の使用の適格要件を満たさない)

2.より単純な選択肢が許容された項目

完全版IFRSsが会計方針の選択を認める場合には、より単純な選択肢のみが中小企業向け会計基準に盛り込まれている。中小企業は、関連するIFRSsを参照の上、その他の選択肢を用いることが許容されている。選択された単純な選択肢には以下のようなものがある。

  • 投資不動産に関する取得原価・減価償却モデル(IAS第40号「投資不動産」を参照して損益を通じての公正価値も許容される)
  • 有形固定資産に関する取得原価・減価償却モデル(IAS第16号「有形固定資産」を参照にして再評価モデルも許容される)
  • 借入費用を費用として処理する(IAS第23号「借入費用」を参照して資産化も許容される)
  • 営業活動におけるキャッシュ・フローの報告に関する間接法(IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」を参照して直接法も許容される)
  • すべての補助金に対して1つの方法(又は、中小企業は、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」に定められる処理方法であれば、どのような方法も使用することができる)
  • 中小企業向け会計基準を適用するとき、個々の地域は、完全版IFRSsを参照して適用する選択肢については許容しないことを決定することも可能である。

3.認識及び測定において単純化された項目

  • 金融商品:
    • 金融資産について、4つのカテゴリーではなく2つのカテゴリーとする。これにより、「意図的な」満期保有ルールのすべて、又はそれに関連する「罰則」について取り扱う必要がなくなるとともに、売却可能資産のオプションの必要がなくなり、その他の多くの単純化がもたらされる。
    • 認識の中止に関する明確かつ単純な原則。譲渡企業に重要な継続的関与がある場合には、認識の中止を行わない。IAS第39号「金融商品:認識及び測定」の複雑な「パス・スルー・テスト」及び「支配留保テスト」は回避される。
    • より単純化されたヘッジ会計
  • のれんの減損-強制的な毎年の減損の計算ではなく、兆候アプローチの採用
  • すべての研究開発費を費用として認識する(IAS第38号では、商業的な実行性が評価された後に資産化しなければならない)
  • 関連会社及びジョイント・ベンチャーに関する原価法(持分法又は比例連結ではない)
  • 農業に関して公正価値の使用が少なくなる-不当な費用と労力を必要とせず、容易に算定できる場合のみ公正価値とする
  • 給付建制度-IAS第19号の詳細な計算及び繰延ルールではなく、原則アプローチ。複雑な「コリドー・アプローチ」は除外されている。
  • 株式報酬-本源的価値法
  • ファイナンス・リース-借手の権利と債務の単純化された測定
  • 初度適用-IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」より、少ない過年度のデータの修正再表示となる。

SACメンバーからのコメント

  • [グループA]中小企業向け会計基準がより簡単な選択肢を認めると、その選択肢は財務報告の質に影響を与えることにならないか懸念する。
  • [グループB]関係する当事者から意見を集めるのにもっと時間が必要なので、6月のSAC会議で再度議論することを要求したい。
  • [グループC]認識及び測定の単純化項目の中で再検討すべき項目として、繰延税金については追加開示項目とすることを提案するとともに、のれんの償却をより短期間の5年から10年の期間で償却することを提案したい。また、省略されたトピックに更に追加すべき項目として、中小企業が契約締結するケースの多い保険契約を加えることを提案したい。中小企業向け会計基準は包括的に2年ごとに見直されるべきとしているが、検討期間も含めて考えると、2年ごとだと間隔が短すぎるので、3年ごとの見直しを提案したい。
  • ドイツの会計基準設定主体は、中小企業向け会計基準の公開草案が理解されているかを評価するために、特にこの基準を採用するのに費用対効果の影響について調査を行う予定であるが、ドイツの企業は中小企業向け会計基準がより単純化することを期待している。(独会計士)
  • 繰延税金については、繰延法が単純化としてはユーザーには理解が得られると考えられるので、資産負債法の使用ではなく、繰延法の修正版を提案したい。(イタリア会計士)
  • (IASBが暫定的に残している中小企業用の選択肢のほかに検討すべきものはあるかとの質問に対し)中小企業向け会計基準についてはのれんの償却を認めるという選択肢を残すべきである。(中小企業向け会計基準を2年ごとに見直すという暫定案に対する意見を求められ)現段階で、具体的な年数を決めるのは時期尚早ではないか。(辻山SAC委員)
  • 50人程度の従業員規模で、年金数理に基づいて、合理的に年金債務を計算できるか疑問があるので、単純化する項目として再検討することを提案したい。(八木SAC委員)

以上

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