第19回会議

国際会計基準審議会(IASB)の第19回基準諮問会議(SAC)が、2007年6月25日と26日の両日にわたり、ロンドンで開催された。日本からは、SACメンバーである辻山栄子早稲田大学商学部教授、オブザーバーとして金融庁より丸山純一審議官が出席し、金融庁より原寛之課長補佐、企業会計基準委員会(ASBJ)より堀本敏博専門研究員が同席した(SACメンバーである八木良樹株式会社日立製作所取締役・監査委員長は欠席)。以下、会議の概要を報告する。

Ⅰ.評議員会の動向

SAC会議の開催に当たり、国際会計基準委員会財団(IASC財団)ディレクターから最近の評議員会の動向について、以下の説明があった。

  • 評議員会は、IASB、SACを含むIASC財団全体の組織・運営に関して、今後10年後のビジョンの策定に現在取り組んでいる。
  • 7月にマドリッドで評議員会を開催するが、そこではIASBからプロジェクトの最近の状況を評議員に説明するとともに、本年4月の評議員会までに検討してきたIASBの監視機能についての討論を予定している。
  • 4月の評議員会で合意され、現在デュー・プロセスの一環として取り組んでいる基準書改訂に関するフィードバック文書は、おそらく7月のボード会議で承認されるであろうが、今後の基準設定に影響を与えることになるであろう。
  • IASC財団の2008年度予算については、基準設定活動として16百万ポンドの予算を達成できるように、国ごとの目標額の設定に取り組んでいる。

Ⅱ.概念フレームワーク

カナダ会計基準委員会(AcSB)のIan Hague氏が、最初に概念フレームワーク・プロジェクトにおける8つのフェーズのうち、現在活動中である4つのフェーズの進捗状況について説明を行った。次に、フェーズA「目的及び質的特性」のディスカッション・ペーパーに対するパブリック・コメントの中で議論の多かった経営者の受託責任(stewardship)については、SACメンバーを3つのグループに分け議論を行った。

(1)プロジェクトの概要

2005年1月から8つのフェーズに分けて行われているが、完了までには5年以上の年月が必要と見込まれている。そのため、フェーズごとにディスカッション・ペーパー及び公開草案を公表することとしている。各フェーズの現在の進捗状況、及び今後の予定は以下の通りである。

フェーズ トピック 現在の状況 文書/デュー・プロセス
A 目的及び質的特性 ボードはDP/PVに対して、回答者によって提起された論点を再検討している。 DP/PVを2006年7月公表
ED2007年Q4公表予定
B 構成要素及び認識 ボードでの審議 DP2008年Q4公表予定
C 測定 ボードでの審議 円卓会議2007年Q1
DP2009年Q1公表予定
D 報告企業 ボードでの最初の審議終了 DP/PV 2007年Q3公表予定
E 表示及び開示、財務報告の境界を含む 未定
F フレームワークの目的及びGAAPヒエラルキーでの地位 未定
G 非営利部門への適用 未定
H フレームワーク全体 未定

(注)DP-ディスカッション・ペーパー、PV-予備的見解、ED-公開草案

  • フェーズA「目的及び質的特性」では、2006年7月に、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)の両審議会がそれぞれ公表したディスカッション・ペーパーのパブリック・コメントにおいて提起された論点について現在審議中である。両審議会は、2007年第4四半期に公開草案を公表する予定である。
  • フェーズB「構成要素及び認識」は、いくつかのマイルストーンから成り立つ。主なものとしては、資産、負債及び財務諸表のその他構成要素の定義、負債と資本の区分に関連した論点、会計単位の決定、財務諸表項目の認識及び認識の中止などである。資産の定義については、2007年2月のSAC会議で議論を行ったが、一部を除いて実質的には審議を終了した。両審議会は、今後他の項目についても審議を開始する予定である。
  • フェーズC「測定」のマイルストーンⅠとして、両審議会は2007年1月と2月に香港、ロンドン、ノーウォークで円卓会議を開催し、4月に円卓会議における論点の審議を終了した。マイルストーンⅡでは、質的特性等の規準を用いて測定属性の候補を分析した結果につき7月から審議する予定である。また、マイルストーンⅢについては2008年からディスカッション・ペーパーの草稿に取り組み、2009年初めの公表を目標としている。
  • フェーズD「報告企業」では、両審議会は現行のそれぞれのフレームワークにおける報告企業の対象に関する隔たりを解消する予定である。両審議会は、報告企業の論点に関する最初の審議を最近終了し、スタッフにディスカッション・ペーパーの草稿を指示した。
SACメンバーからのコメント
  • フェーズAのディスカッション・ペーパーの質的特性の1つである「信頼性」(reliability)に代えて「忠実な表現」(faithful representation)を用いることになったが、本当に「忠実な表現」の方が財務諸表の利用者及び作成者にとって理解しやすいのか疑問である。IASBが何故このような変更を行ったのか説明してほしい。(独会計士)
    → コメント回答者が考えている「信頼性」の意味にばらつきがあり、多様な回答者が「信頼性」の意味を様々に異なって理解していた。このことが「信頼性」という用語を「忠実な表現」に変更することの妥当性を示していると判断された。
  • フェーズBに関して、前回のSAC会議の折に多くのSACメンバーから、資産の定義と自己創設のれんの関係が明確ではないこと、またそれを明確にするためにも、資産の定義についてはその認識及び測定の議論と一体となって議論する必要があることが指摘された。この点に関するIASBのその後の議論を聞きたい。フェーズCに関して、測定に関する円卓会議が3回開かれたこと、またその要約が的確に纏められていることについて、敬意を表する。今後のIASBの議論において、是非とも円卓会議における議論が尊重され、最終公表物に適切に反映されることを期待する。(辻山SAC委員)
    → 当該事項については、今後フェーズBの「資産の定義」及び「認識」において議論が行われる予定である。(IASB審議会メンバー)

(2) 経営者の受託責任(Stewardship)

2006年7月に公表したフェーズA「目的及び質的特性」に関するディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークについて:財務報告の目的及び意思決定に有用な財務報告情報の質的特性」に関して、2007年4月に提起された論点の再検討を開始したが、今回はこのうちパブリック・コメントで議論の多かった経営者の受託責任について概略を説明した上で、事前に提示した質問事項を基に、SACメンバーを3つのグループに分け議論を行い、各グループの代表者から、各グループでの議論内容について発表があった。主な内容は以下の通りである。

SACメンバーからのコメント
  • 概念フレームワークにおいて、経営者の受託責任にも考慮を払うことは必要だと思うが、受託責任を、主たる目的の一つとしてではなく、副次的な目的として位置づけることも考えられる。現行のIASBならびにFASBの概念フレームワーク、また日本の概念フレームワーク(討議資料)においても、それに類似した位置づけになっていると思う。つまり財務報告の目的には様々なものがあるが、まずはそのうちの投資意思決定目的に焦点を当てて、情報の質的特性や認識及び測定の問題を明らかにすることによって、結果的にはその他の目的にも資することになるという考え方である。(辻山SAC委員)

[グループA]

  • 受託責任という用語は、各国の言語にうまく翻訳できず、受託責任の概念は何かということから議論を開始した。概念フレームワークの見直しでは、キャッシュ・フローの予測にかなりの重点を置いているが、将来のキャッシュ・フローが強調されると、受託責任を評価する過去の情報が少なくなるのではないかと懸念している。
  • 財務報告において、投資家が資源配分の意思決定において有用な情報を必要とするのは明らかであるが、経営者の受託責任を評価するために有用な情報が何であるかを識別するのは非常に難しい。財務報告において、資源配分の意思決定に有用な情報があれば、受託責任の評価のための追加情報は特に不要ではないか。

[グループB]

  • 受託責任は、言語、文化、法体系が異なることにより、そもそも何を意味するかが異なっている。そのような中、国際財務報告基準(IFRS)における概念フレームワークで受託責任を一つに定義し、財務報告の目的として検討することに無理があるのではないか。

[グループC]

  • 経営者の受託責任を評価することとは、現在の経営者を評価することであるが、一方資源配分の意思決定という場合には、将来のキャッシュ・フローを評価することであり、自ずとこの2つの目的は対立するのではないか。
  • 財務報告の目的として、2つの目的を持つということは、会計情報に関して2つの平行するシステムが必要になることである。従って、2つの目的を検討するのではなく、両者を結合したものを検討すべきではないか。

Ⅲ.IASBの作業計画

Tweedie IASB議長及びIASBディレクターから、IASBの戦略的目標、作業計画等について説明が行われた。

  • IASBでは現在、 1. 中小企業向け会計基準の完成、2. より多くの国が各国の会計基準から国際会計基準へ切り替えることの奨励、3. IFRSと米国会計基準とのコンバージェンスの3点を主要な戦略的目標としている。
  • 1. について、IASBは2007年2月中旬に公開草案を公表し、現在コメントを募集中(筆者注:コメント期限は10月1日)であるが、この間にフィールド・テストを実施予定である。
  • 2. について、各国のコンバージェンスの取組みは以下の通り。
    3月末に、ASBJとIASBの代表者との間で、日本の会計基準とIFRSのコンバージェンス達成の目標に向けた共同会議を開催した。また、ASBJとは、両者でさらにコンバージェンスを加速できないか、その際文書を交換できないか、また期限を区切ることができないか等について議論を進めている。
  • インドでは、最近コンバージェンス計画の議論を開始したが、コンバージェンス委員会を設立し、いつまでにコンバージェンスを実施するかにつきロードマップが必要であることに同意した。現時点では2011年までにIFRSを採用する方向で検討している。(筆者注:インドの上場企業及び公益企業は2011年4月1日以後開始する会計年度からIFRSを適用することをインド勅許会計士協会が7月下旬に表明。)
  • 日本、インド、中国、韓国及びその他の主要経済国がコンバージェンスに積極的に取り組んでいる要因の1つとして、欧州委員会と欧州証券規制当局委員会(CESR)が取り組む同等性評価の実施を挙げることができる。EUは、2009年までに、同等と思われない会計制度について差異調整表(reconciliations)を要求するかどうかを決めなければならない。
  • 3. については、米国証券取引委員会(SEC)からのオブザーバーであるJulie Erhardt副主任会計士より、6月20日に決定した外国登録企業(FPI)のIFRSに基づく財務報告に対して、米国会計基準に基づいた場合の数値との差異調整表の作成を廃止する規制改正案に関する報告が行われた。
    • この規制改正案は、まもなくSECのホームページに公表されるが、公表後75日間のコメント期間を用意している(筆者注:7月3日公表済み、コメント期限は9月24日)。差異調整表の廃止の対象は、IASBの作成した英語版の完全版IFRSを用いる場合としている。
    • なお、米国企業に対してIFRSを認めるというコンセプト・リリースもこの夏に公表予定である。
    • 米国市場では、現在単一の基準という状況であるが、これを破棄するメリットが得られるかどうかが、大きな関心事である。

SACメンバーからのコメント

  • 中小企業向け会計基準については、今後コメント・レターを受領後、寄せられたコメントに基づいて次の11月のSAC会議で議論を行う予定であるが、ヨーロッパではさらに簡素化すべきとの意見がかなり上がっている。(独会計士)
  • ASBJはこの4月から新しい委員長の下で活動を続けている。新委員長は、今後も従来通りの基本的なスタンスを維持しつつ、コンバージェンスに真摯に取り組み、可能な限りそのスピードを加速していく方針だと聞いている。(辻山SAC委員)
  • 今回の決定は、SECにとっては大きなステップではあるが、EUにとっては小さなステップでしかない。何故ならSECは完全版IFRSしか認めておらず、EUが採用するEU版IFRSではないからである。EUの法的環境を考慮すると、2009年にEUの企業が採用するEU版IFRSが承認されないのではないかと懸念している。(独会計基準設定主体)
    → 例えばクウェートのようにIFRSを採用と言いつつ、内容が全くことなることが問題であるが、欧州では99%の上場企業が実質的には完全版IFRSを適用しており、ここで議論する論点ではないと考える。(IASB審議会メンバー)
  • 現時点では完全版IFRSとEU版IFRSとの間に大きな違いはないが、今後IAS第37号の改訂版等で両者の間に大きな差異が生じ、EU版IFRSと完全版IFRSが乖離する可能性がある。(独会計士)
  • 最近2、3カ月の米国の動きは目を見張るものがあるが、MOUを結んだ2年前と比較すると、MOUの目的・文脈がすっかり変わってしまったのではないか。MOUは当初差異の解消を目指していたが、差異が解消されなくてもIFRSを採用すれば、米国での上場が可能となった。(仏コンサルティング)
    → MOUの文脈は変わったが、MOUが結ばれなかったら、SECはこのような決定をしなかったであろう。(IASB審議会メンバー)
    → SECでは意見をいつでも受け付ける。EU版IFRSを認めるべきであるとか、各国の基準も認めるべきと主張したいのであれば、そのような意見を提出してほしい。また、75日間のコメント期間以降の予定について質問があったが、特に決まっていない。コメントが多く、かつ重要であれば、検討の作業は長引くであろう。(SEC副主任会計士)

Ⅳ.金融商品

IASBスタッフから、現在進めている金融商品の公正価値測定モデル(すべての金融商品は公正価値で測定され、実現損益及び未実現損益は、発生した期間に認識されるべきというもの)による全面時価会計に向け、2008年1月までに公表を予定しているデュー・プロセス文書の背景及びアプローチの意図について説明が行われた。

  • 2005年10月、金融商品の財務報告を改善するために、両審議会は以下3つの長期目標を設定した。
    1. すべての金融商品は、公正価値で測定し実現損益及び未実現損益は発生した期間に認識する公正価値測定モデルを採用する。
    2. ヘッジ会計の規定を簡素化し、また可能であれば、特殊な会計処理を削減もしくは排除する。
    3. 既存の認識の中止に関する基準と比較して、より簡素化し、適用をより容易にし、財務報告の概念とより整合する、金融商品の認識の中止に関する収斂した新しい基準を策定する。
  • 今回は上記のうち(1)の公正価値測定モデルの今後の取るべき方向性を検討しているが、公正価値測定は、異なる金融商品に異なる測定属性を使用することによって引き起こされる多くの問題を解決し、より適切な情報をもたらすであろう。
  • デュー・プロセス文書では、両審議会の長期目標達成に向け、1. 既存の規定が生み出す複雑性を削減し、2. 公正価値測定モデルが現行規定を改善かつ簡素化し、3. 公正価値測定モデルへの実行可能な移行方法等についての検討を予定している。

SACメンバーからのコメント

  • 財務諸表の利用者のニーズは何か。利用者が本当にすべての金融商品を公正価値で測定し、その結果を貸借対照表に表示することを望んでいるとは考えられない。実際に約50の投資家、アナリスト等に調査を行ったが、流動性の高い金融商品を公正価値で評価することには明らかに支持を得たが、金融負債を公正価値で評価することには抵抗が見られた。作成者のみならず、利用者もこのような公正価値測定モデルによる会計上の変更を望んでいないのではないか。(独会計士)
  • 大筋では、金融商品を公正価値で評価することに賛成する。ただし、企業の負債の評価については理解が得られておらず、懸念が残る。(英金融機関)
  • 財務諸表利用者が、公正価値の情報を欲しているのはもはや疑いもない。また、負債の評価について、公正価値の情報も重要だが、ヒストリカル・バリューの情報も重要である。いずれにせよ、4つの論点がプロジェクトを20年間も遅らせる口実とはならないのではないか。因みに、米CFA協会では、公正価値測定を支持するペーパーを本年3月に公表している。(米CFA協会代表)
  • 公正価値測定に関するガイダンスを出すことが重要である。また、公正価値の監査可能性は重要であると考えるが、今後トレーディング目的で保有する商品や流動性の高い商品以外にまで公正価値評価の対象を広げていくにあたって、監査人はどのように信頼性をもって監査を行うかという点が問題となってくる。(バーゼル委員会代表)
  • ガイダンスが多すぎるとかえって実務家は困る。また、規制当局は独自に情報を入手可能であり、彼らの要請は考慮すべきではないと考える。(独会計基準設定主体)
    → 銀行監督当局と財務諸表利用者の目的は、共通である限りにおいて、銀行監督当局の意見を傾聴すべきである。(IASB審議会メンバー)
    → 金融商品の時価会計導入はマーケットの反応を見極めながら進めていく必要がある。例としてクレジット・デリバティブのヘッジに関し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が時価会計、ローンが原価主義となっていることにより、実務上様々な問題が生じている。(丸山審議官)
  • 今回のペーパーを読んで、2000年のJWG提案をすぐに思い出した。少なくとも基本的な方向性はJWGペーパーと同じもののように映る。何度も否決された提案をなぜ繰り返し提案するのか、理解に苦しむ。そもそも金融商品に関する全面時価モデルは、現行基準の複雑性を緩和するための理想的な解決策、もしくは方向性だとは思わない。その理由は、2000年のJWG提案の末尾にドイツならびにフランスの代表からの「反対意見」として掲げられていた内容とほとんど同じである。(辻山SAC委員)

Ⅴ.IASBアジェンダの提案

IASBは毎年新たにアジェンダに追加する項目を検討するが、IASBのボード会議で決定する前に、IASBは提案されたアジェンダと優先順位に関してSACと協議を行うことになっている。今回は(1) 経営者による説明(Management Commentary)、(2)無形資産、(3)共通支配下の取引の3つのプロジェクトにつきIASBスタッフからアジェンダの提案が行われた後、SACメンバーからコメントが述べられた。

SACメンバーのコメント

  • 優先順位としては、今回の提案に上がっていないが、統一的な会計基準が定まっていない採掘産業の会計基準を第一に考える。また、今回の提案の中では経営者による説明を第一候補と考える。(IMF代表)
  • 他の基準の簡素化に資する概念フレームワークのような重要なトピックにIASBの限られた人的資源を使うべきと考える。(独会計基準設定主体)
  • まず第一に、現在取り組んでいるアジェンダの数があまりに多いので、既存のプロジェクトに注力すべきである。今回のリストの中では公開草案でも関心の高かった経営者による説明を検討すべきである。(英金融機関)
  • 排出権取引を第一に考える。無形資産はそれほど優先順位が高いとは思わない。公正価値測定について、利用者が真に何を望んでいるか確認するために特別セッションの機会を持ってはどうか。アナリストの中でもCFA協会は支持しているようだが、フランスのアナリストは全く公正価値測定を望んでいない。(仏コンサルタント)
  • IASBは既に多くのプロジェクトを抱えており、プロジェクト数は抑えるべきである。また、プロジェクトをフェーズ1、2、3と細分化すべきではない。何故なら、フェーズ2を取組み中にフェーズ1のコンセプトを変更する可能性があるからである。(イスラエル会計士)
  • 多くの投資家は、最近では財務報告において、定性的な記述を重視するようになってきており、経営者による説明がもっとも重要な項目と考える。但し、国ごとに大きく記載内容が異ならないように、グローバルなガイダンスが策定されることを望む。また、排出権取引については、取引が急速に増加しているにも関わらず、会計処理が統一されていないことから、明確なガイダンスの策定が必要と考える。無形資産については、概念フレームワークの議論が終わるまで待ってはどうか。(独会計士)
  • 経営者による説明は、国によって既に法制化されているものとの齟齬をきたす恐れがあるので、今回の議題として取り上げるのは反対である。(香港作成者)
  • 経営者による説明と概念フレームワークのフェーズE(表示及び開示)の関係はどのようになっているか。もし内容が重複するようであれば、概念フレームワークの作業を優先して、作業の重複を避けるべきと考える。また、経営者による説明は、ガイドラインに留め、義務化すべきではない。(丸山審議官)

Ⅵ.退職後給付

本プロジェクトは、2006年7月に新規に追加されたIAS第19号(従業員給付)を見直すための2つのフェーズからなる。第1フェーズは、現行の年金会計を大幅に改善することを目的として、4年程度での完成を目指し、2006年10月にIASB単独で作業を開始し、これまで第1フェーズに関して以下の項目につき暫定的な合意を行った。

  • IAS第19号における遅延認識(deferred recognition)を廃止すること
  • 期待運用収益(expected return on assets)を廃止すること
  • 確定給付(defined benefit)における退職後給付の給付費用の要素の表示
  • キャッシュ・バランス・プラン(cash balance plan)の会計処理

IASBでは本年末までにディスカッション・ペーパーの公表を予定しており、上記暫定合意内容につき、事前に提示された質問事項に対してIASBスタッフから説明があるとともに、質疑応答が行われた。

質問事項及びSACメンバーからの回答

質問1
制度資産の価値及び退職後給付債務の変動のすべてを、それらが発生した期間に、包括利益、又は当期純利益(profit or loss)とその他包括利益のいずれかで認識することに同意するか。

  • 当然である(米CFA協会代表)。
  • 回廊アプローチを支持する。(独会計士)
  • 「遅延認識をやめ、すべての未認識の差異を直ちにオンバランスすべきだという質問1」について特に反対の意見表明をしなかったのは、この文章の中に「純利益もしくはその他の包括利益に含めて」という表現があったからで、「その他の包括利益」に含めるという前提のもとである。また当然、この部分は業績には含まないという前提のもとである。(辻山SAC委員)

質問2
制度資産に対する収益を、期待運用収益と保険数理差損益に分けないことに同意するか。

  • 賛成である。利用者に混乱を招くとは考えられないので、議論するトピックではないと考える。(英金融機関)
  • 理解可能性の観点から見ると、2つに分けるより1つの方がわかりやすいと考えるので、1つにすべきである。(イスラエル会計士)
  • 表示上は一つの数字で表し、期待運用収益と保険数理差損益は脚注で表示してはどうか。(米CFA協会代表)

質問3
制度改定から生じる変動の影響のすべてについて、当該制度変更が生じた期間に即時に認識することに同意するか。同意しない場合、それらをいつ認識するべきと考えるか。その理由は何か。

  • 制度改定の性質及び制度の仕組みによるのではないか。重要な変更が、会計上どの程度影響を与えるかによるであろう。(インド会計士)
  • 企業レベルでは、制度変更が生じた当該期に認識するのが合理的と考える。ただし、かなりの影響を与える可能性があるので、金融システム全体の安定性を考慮する必要がある。(バーゼル委員会代表)
  • 財務報告の目的の1つが、利用者に経営者の受託責任を評価するということに同意するなら、将来の経営者に責任を負わせるべきではなく現在の経営者が責任を負うべきである。(伊会計士)
  • 制度改定が関係者にどの程度影響を与えるか考えるべきである。関係者はそのような大きな変更を望んでいないので、現実的な適用を考えるべきである。(独会計基準設定主体)

Ⅶ.企業結合(フィードバック文書)

IFRS第3号「企業結合」とIAS第27号「連結及び個別財務諸表」の改訂版の公表プロセスの一環として公表を予定しているフィードバック文書について、IASBスタッフが説明を行った。従来は基準開発に当たって、主要論点の検討状況は、基準書の中の「結論の根拠」に記載していたが、今回は公開草案で反対が多かったことから、評議員会でIASBの検討プロセスの透明性を強化するために、フィードバック文書を公表して、その中で考慮すべき事項等について十分に説明を行うことを決定した。

SACメンバーからのコメント

  • 説明責任を考慮するとフィードバック文書は非常に重要であるが、人的資源等を考慮すると200ページではなく、基準書の結論の根拠には触れていない内容につき、10ページの要約で十分ではないか。(米CFA協会代表)
  • フィードバック文書をIASBが公表することには感謝したい。但し、200ページの分量になると、分量が多すぎて誰も読まないのではないかと懸念する。すべてのコメント・レターをカバーするのではなく、10縲鰀15の主要な論点に焦点を当て、それぞれに対してIASBのコメントを全体で30縲鰀40ページ以内に抑えることではどうか。(独会計士)
    → かつて基準を公表した際に、日本のコメント提供者から何故重要なコメントに対する回答が、基準書の「結論の根拠」に掲載されていないのかというクレームがあった。「結論の根拠」には、多くのコメントが寄せられた項目に対してIASBの見解を示しているが、その場合マイナーな意見は捨象される可能性がある。ページ数を抑えると同様のクレームが寄せられる懸念がある。(IASB審議会メンバー)
  • IASBの回答案では、反対意見が多かった論点について「広い支持を得られなかったことに驚かなかった。(中略)むしろ、経済的単一体説(economic entity perspective)へのシフトが認知されたことに対する感触の強さに驚いた」と回答しているが、これでは寄せられたコメントに対して真摯に応えず、初めから決まっているラインを維持しているにすぎないという印象を持った。表現を見直すべきである。(丸山審議官)

(ほりもと としひろ)

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