ASBJ 企業会計基準委員会

第84回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2005年7月8日(金) 13時30分~16時30分
場所 財務会計基準機構 会議室

議題

審議事項

  1. 企業結合(のれん)の会計処理について
  2. 企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況について
  3. 会社法対応専門委員会における検討状況について
  4. 四半期会計基準専門委員会(仮称)の設置および専門委員の選任について

報告事項

  1. 情報サービス産業の収益検討ワーキング・グループの設置について
  2. IASB会議報告
  3. 公開草案「特定目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点(仮称)」について

議事概要

審議事項

1.企業結合(のれん)の会計処理について

西川副委員長及び布施専門研究員より、企業結合(のれん)の会計処理に関する参考人(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏)の意見聴取を踏まえた具体的検討事項である「のれんの即時償却・特別損失処理」及び「のれんを非償却資産として取り扱うこと」について企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)での審議状況が説明され、意見交換が行われた。(意見聴取の内容については、第82回企業会計基準委員会議事要旨の添付資料「のれんの会計処理に関する意見聴取の議事概要」をご覧下さい。)  なお、今回の検討事項として事務局から挙げられた主な論点は以下のとおりである。

  1. のれんの即時償却・特別損失処理について
    • 考え方については、企業結合会計基準の定めの解釈として取り扱う(適用指針の結論の背景に記載)ことが示された。また前回までの専門委員会及び当委員会での議論として、「検討状況の整理」を支持(のれんの即時償却・特別損失処理は認められない)する方向性が根拠とともに示された。
  2. のれんを非償却資産として取り扱うことについて
    • 考え方については、企業結合会計基準の定めに関するものとして取り扱い、検討の結果については、公開草案の公表にあたり適用指針とは別途の資料として公表して、当該部分はコメントの対象となるものではない旨を明記すること示された。また前回までの専門委員会及び当委員会での議論として、「企業結合会計基準」の定めを支持(のれんを非償却資産として取り扱うことに反対)する方向性が根拠とともに示された。

以上の論点に基づいて審議が行われた。審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 1.の方向性の根拠として、無形資産の償却期間は20年が最長という認識があるが、日本基準の場合、例えば30年という償却期間が合理的であると認められるのであれば、それで償却期間を設定することが可能であると考えられる。したがって、日本の会計基準ではのれんから識別可能な無形資産を分離すれば当該無形資産の償却期間はのれんのように最長が20年に限られないことを記載してはどうか。
  • 2.における議論として、わが国に包括的な無形資産に関する会計基準が存在しないことについての記載がなされているが、そもそも無形資産は対象が何かという範囲が明確ではない現状があり、さらに国際的にも研究開発費については、日本と米国が費用処理するところを国際会計基準のように資産計上するといったように統一されていない点など難しい問題も孕んでおり、研究していく必要性もあることから今回の論点に対する記述としてはふさわしくないのではないか。
  • 今回具体的に上述2点の論点が提案されていることも踏まえて、当委員会の姿勢を明確化するためにも無形資産の会計を本格的に考えていく必要があるのではないか。
  • 結論については基本的に賛成するが、論理の合理性や表現に注意して誤解を与えないような内容にしてもらいたい。
2.企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況について

西川副委員長、秋葉統括研究員及び布施専門研究員より、企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況についての説明がなされた。今回は、引き続き専門委員会で検討されている事業分離等に関する会計基準(案)及び同適用指針(案)の文案についての検討状況が説明され、意見交換が行われた。

審議における主な発言は以下のとおりである。
(事業分離関係) ¢ 投資の清算、継続を判断する上で、継続的関与については全体の枠組みにおいて、どのように関わっているのか。 ¢ 投資が継続している場合、分離先企業の株式に係る一時差異は、事業分離日に移転する繰延税金資産及び負債と新たに生じた税務上の移転損益に係る一時差異である旨がわかるように文章を工夫したほうがよいのではないか。 (企業結合関係)

  • 取得原価の配分額の算定について、参考資料とするのは、その位置付けがあいまいであり、また、内容も十分な議論が必要であるため、疑問であるという意見と何らかの形で入れて欲しいという意見があった。
  • 企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額について、監査対象となるかという問題はどのようになっているのか。
  • のれんは取得原価の配分残余であるため、のれんに対する税効果は認識しないという文案の記載ぶりの趣旨は何か。
3.会社法対応専門委員会における検討状況について

西川副委員長、布施専門研究員及び石川研究員より、会社法対応専門委員会における検討状況についての説明がなされた。今回は、企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」の改正の概要及び株主資本等変動計算書(仮称)に関する作成基準の基本方針についての説明がなされ、意見交換が行われた。

審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 株主資本等変動計算書(仮称)に関する作成基準の基本方針における記載項目について、A案として株主資本、B案として株主資本とその他(純資産の部全て)を表示する案がこれまでに検討されつつも、合意に至っていない現状から、折衷案(1.記載項目の範囲は純資産の部全て、2. 株主資本項目の増減についてはその変動事由ごとに総額表示、3. 株主資本以外の項目は純額表示とするが、企業判断により変動事由ごとに総額表示も可)が提案されているが、B案では実務上煩雑になる可能性があることからA案を支持する。
  • 貸借対照表に純資産の部ができるのであれば、純資産の部全てを別途の財務諸表で開示するということで、全て総額表示で開示することが適切であると考えられることからB案を支持する。しかしながら実務への配慮は必要であり、総額表示が困難な項目については、純額表示をすることができるような形で実務上の調整を図ることが望ましいのではないか。
  • のれんの会計処理のように理論的に明白な考え方の相違があるもの以外については、できるだけ国際的な動向にあわせておくことがよいと考えられるが、現状を考えて折衷案である事務局案を支持する。
4.四半期会計基準専門委員会(仮称)の設置および専門委員の選任について

冒頭、金融庁企業開示課課長池田氏より、6月28日に金融審議会金融分科会第一部会から公表された「ディスクロージャー・ワーキング報告(今後の開示制度のあり方について)」に関連し、「四半期開示のあり方」に係る部分の趣旨と四半期財務諸表の作成基準の策定に関する報告書上での考え方についての概要説明がなされた。その後、石井委員及び新井専門研究員より金融審議会において「四半期開示のあり方」についての一定の方向性が示されたことを踏まえて、四半期財務諸表の作成基準の具体的な検討を行うことを目的とした専門委員会を設置すること、及び専門委員の選任についての提案がなされ、了承された。

5.情報サービス産業の収益検討ワーキング・グループの設置について

西川副委員長及び吉田専門研究員より、テーマ協議会から提言された提言書の中で「情報サービス産業における会計処理」に関わる収益の認識及び測定の問題については、優先度が高く緊急性があるとされており、当ワーキング・グループでは情報サービス産業の収益における問題の所在を十分に調査して、今後検討すべき会計上の論点の整理を行う予定である旨の報告がなされた。

6.IASB会議報告

山田IASB理事より、6月22日及び23日の2日間に開催されたIASB会議の報告がなされた。

(内容については、「第47回IASB会議報告」をご覧ください。)

7.公開草案「特定目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点(仮称)」について

日本公認会計士協会監査・保証実務委員会の高橋委員長より、7月4日付で公表された「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」(公開草案)の概要についての報告がなされた。

(公開草案の内容については、日本公認会計士協会のホームページをご覧下さい。)

以上